コラム Dr.MANAのセンシュアルエイジング Vol.51 足元に火が点いた食料自給率

Dr.MANAのセンシュアルエイジング

農業大国フランス」に始まり「日本における稲作栽培風習」、「ドアの開ける内と外」と順に考えてきました。今回「日本農業の立て直し」で締めくくろうと思いましたが、世界はのんびりさせてはくれません。

ロシアのウクライナ侵攻による戦争勃発でいろんなことが滅茶苦茶になっています。熱い戦争に巻き込まれた市民の窮状、幼気な子どもたちにも迫る命の危機。まさに鬼畜の所業です。日本も対岸の火事ではありません。食料自給率についても、長期的に伸ばしていくというより、喫緊の食料確保ができるかを念頭にした施策が求められていると思います。

かつて湾岸戦争などの折に「相手国の思惑によって食料や原材料の輸入が途絶したらどうする?」という想定問題が論議されました。時の大蔵大臣は「物々交換の時代ではない。現代は貨幣経済、経済力さえあれば世界中から商品は手に入る」と、国民の杞憂を宥めました。これこそが平和ボケです。今は軍事大国が侵略の牙を剥く戦時下。経済制裁とその反撃、資産凍結と貿易停止など、未曾有の混乱を覚悟しておかなければなりません。

政府は自給率向上のため、1. 旬の食べ物から食す 2. 地産地消 3. 米中心に野菜たっぷりの食事 4. 食品ロスをつくらない 5. 国産品の愛好を、と国民に呼びかけていますが、今いる農家・農協と関連業者を保護することしか考えていないのでしょうか? 消費者を無視しているだけでなく、新しい農業の担い手を育成する気持ちすらない。呆れてしまいます。

自給率低下の第一の要因は消費者の嗜好の変化ではなく、農業従事者の加速度的な減少の結果です。山間部に限らず、里山集落も崩壊あるいは限界化しているのが現状です。稲作だけに頼ってサラリーマン兼業農家をやっていては、職業意識も湧かず消費者も見えず、村を離れていくのは当然です。

専門家でない私が、どうしたらいいとは言えないことは分っています。でも、将来的になんとか自給率をドイツ(86%)くらいにはしたいと思います。やればできないことはないと思うんです。消費者も、生産者も、政治も行政も、もっとまじめに考えてみましょうよ。

【付録】国別食料自給率(カロリー:%)

米国 132/カナダ 266/スペイン 100/イタリア 60/オランダ 65/スウェーデン 63/英国 65/スイス 51/オーストラリア 200/韓国 35

Dr. MANA(岩本 麻奈)

一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長/ナチュラルハーモニークリニック顧問医師/エッセイスト/コスメプロデューサー/美容ジャーナリスト 
皮膚科専門医。20年に渡るフランス滞在ののち、東洋のパリ“プノンペン”に転居。女性を元気に美しくする講演活動を続けている。「パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ」「生涯男性現役」(ディスカヴァー トゥエンティワン)「フランスの教育・子育てから学ぶ 、人生に消しゴムを使わない生き方」(日本経済新聞出版社)など、美容やライフスタイルに関する著作多数。近著は「結婚という呪いから逃げられる生き方」(ワニブックス)

公式HP: dr-mana.com   公式ブログ: ameblo.jp/dr-mana

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