Dr.MANAのセンシュアルエイジング

同じ作物を同じ耕地に毎年続けて栽培することを連作といいます。連作によって地力は消耗し、病虫害が増えて収穫は落ちるので、人為的にいろんな方法で地力の補給を行います。作物を交替に植え付ける輪作もその一つ。ヨーロッパ中世の三圃制では村の耕地を三等分し、春蒔きの大麦・秋蒔きの小麦と休耕地の輪作を行いました。近世になると休耕地には根菜やマメ科牧草を作付けして遊休地はなくなっています。

 

ところで日本の農村はどうでしょう? 米作り農家では、春の苗代から初夏の田植え、稲の花が咲き、稲光が結実を促し、秋のたわわな稲穂を稲刈りして脱穀。年々見慣れた景色が繰り返されます。稲は長期間にわたって連作することのできる稀有な作物と言われます。

 

もっとも、稲の連作可能な理由は稲そのものではなく水、水を湛える水田土壌にあります。毎年更新される感慨水は養分をもたらし、乾燥した畑土壌よりはるかに肥沃であり、酸性土にならず、病虫害の発生も抑制されます。

 

水田土壌の形成は華南や東南アジアでも同じことですが、日本では歴史的な要因もありました。米作りに執着したヤマト政権から始まって、徳川幕府は米の収穫高のみで藩の大小を統制しました。近代となっても、農業とは米作のことであり続けました。

 

米作の本質は灌漑です。山国で河川は急流な日本では、渓谷から水を引いて、最上部の田から低地の田に順次灌漑水を施していく、水利土木工事が不可欠となります。つくるだけでなく設備を維持管理や営繕も必要です。米作は一戸の農家で完結するものではありません。この国の米作が始まって以来営々と積み重ねられてきた、村落の全員が参加する産業組織あるいは皆が組合員である農業協同組合の事業だったのです。

 

今でも村役場の農業振興課あたりが、年間の作業予定を一手に仕切って営農を指図している自治体は多くあります。こうなってくると精農も堕農もない、同調圧力も鉄壁です。それによって元気とアイデアが摘み取られ、日本の農業は今「自然死を待つだけの状態に逢着しているのではないか」と危惧されるのです。どうすればいいのでしょう?

Dr. MANA(岩本 麻奈)

一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長/ナチュラルハーモニークリニック顧問医師/エッセイスト/コスメプロデューサー/美容ジャーナリスト 
皮膚科専門医。20年に渡るフランス滞在ののち、東洋のパリ“プノンペン”に転居。女性を元気に美しくする講演活動を続けている。「パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ」「生涯男性現役」(ディスカヴァー トゥエンティワン)「フランスの教育・子育てから学ぶ 、人生に消しゴムを使わない生き方」(日本経済新聞出版社)など、美容やライフスタイルに関する著作多数。近著は「結婚という呪いから逃げられる生き方」(ワニブックス)

公式HP: dr-mana.com   公式ブログ: ameblo.jp/dr-mana

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