つい60年ほど前まで、日本は働く人の半数以上が農民の農業国でした。一方ヨーロッパは、16世紀からの重商主義と18世紀以降の産業革命によって工業国家・軍事国家と転換し、後進地域を植民地として収奪する帝国主義諸国となりました。人の物を奪う者は、己が物を奪われる夢に囚われます。もっとも、自然を相手とした農業国だから善良で平和とは、言えるはずもありませんが。
センシュアル・エイジングのお手本国である“美の大国"フランスが堂々たる農業大国であることは忘れられがちですが、地産地消̶美食の都を支えているのは、間違いなく豊かな農業文化です。
ではここで、フランスと日本を比べてみましょう。
まずは概観から。フランスの国土面積は日本の1.5倍、人口は日本の1/2です。GDP国民総生産額は2兆7.8千億ドル(仏)と4兆9.7千億ドル(日)。国民1人当りGDPであるGNIは41,358ドル(仏)と39,0882ドル(日)です(2018年)。ちなみにフランスの観光客数は世界一で8,686万人となっています(2019年)。
フランスの農業を見てみます。EUの農用地面積16%、及び農業生産額17%を占め、どちらもEU最大です。主要農作物は、てん菜、小麦、とうもろこし、大麦等の穀物、ぶどう、生乳、肉類等と豊かです。なおワインの生産量と貿易輸出額の世界一は揺らぎません。来場者70万人を超える世界最大規模の国際農業見本市は、パリで開催されます。
そうは言っても、1990年代以降フランスの農業人口は毎年減少を続けています。人口の都市集中と産業構造の転換は農地転用による農地減少に結果しています。かつての窒素肥料大量使用による環境汚染も深刻な問題で、フランスは「持続可能な農業」に向かって努力している現状です。では日本の農業はどうか。食料自給率(人日熱量)を調べてみました。フランスは127%、これに対し日本は38%でしかありません。次回はそこから考えてみます。