2021年末から、ウクライナを巡る問題が世界を揺るがせています。米欧とロシアの主張には隔たりがあり、溝は少しも解消に向かっていません。この間、インフレ懸念で上昇を続けてきた原油相場は一段と上昇して90ドルに達しています。ウクライナ情勢の緊張継続や、旺盛な需要の継続と北米での厳冬による供給障害を背景に、原油相場は一段高となり、約7年ぶりの高値を更新しました。2月に入っても、産油国の盟主サウジアラビアが原油の設定価格を引き上げたことや、米国の製油所が厳冬の気候の影響で一時閉鎖されるなどしたため。北海ブレント先物で、1バレル=94ドルを付け、WTI先物も92ドル目前まで上昇しました。米国とイランの間接協議が再開され、協議進展への期待感が原油高の圧力を緩和する2015年に停止されたイラン核合意が復活し、イラン原油の供給が拡大して需給緩和に繋がる可能性がでてきました。それでも原油高は気つけるべき水準である1バレル=90ドルを維持しています。
しかし、米国では原油高にとどまらず、様々な物価が上昇しています。年率2.0%のインフレターゲットを大きく超えて、インフレは顕在化してしまいました。そしてインフレ圧力を受けて金融引き締めへの姿勢を鮮明にする米FRBは、3月FOMCでの利上げ実施は確実、さらに利上げの幅が大きくなるとの観測にも繋がっています。年初からの金利上昇ベースには弾みがつき、10年米国債利回りは1.93%台にのせました。2年米国債利回りも1.31%を付けました。フェデラルファンドレート(FF)先物市場のインプライドレートも上昇を続けており、1月米雇用統計が発表された2月第1週以降、3月FOMCでの0.50%幅での利上げを完全に織り込みました。
金利の上昇は米国だけにとどまりません。金融引き締めを巡っては、2月のECB理事会で実質的な議論が始まりました。ラガルドECB総裁は、2月7日の欧州議会で、インフレに関する経済データを注視し、中期的なインフレ見通しに対する影響を慎重に分析すると発言しました。英国のBOE政策委員会も利上げを実施しており、金融政策のバイアスが金融引き締めに傾いたことは明らかです。
10年米国債だけではなく、ドイツ国債や日本国債の利回りも急ピッチで上昇しました。債券利回りへの上昇圧力(価格は下落)は強まっています。日銀だけは、日本国債の利回りが急上昇することを嫌って、債券利回りの上昇を抑制する債券の指値買い取りを市場で施しました。
物価動向は、米国のみならず世界的な上昇段階に入っています。もはやデフレではない。金利の上昇には気を付けておきましょう。