コラム お金の知識を高めるコラム Vol.68 米シリコンバレー銀行が経営破綻

お金の知識を高めるコラム

Vol.68 米シリコンバレー銀行が経営破綻

3月10日、米カリフォルニア州の金融当局は、シリコンバレー銀行(SVB)を閉鎖し、連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれたと発表した。

SVBは、1983年に設立され、テクノロジー・スタートアップ企業向けに特化して金融サービスを展開してきた。米国では、新興企業が銀行口座を開設することも難しい為、ヴェンチャーキャピタルとの橋渡しや暗号通貨取引に絡む決済などにも業務を広げ、他行との差異化も図っており、重宝されている銀行ではあった。2022年末時点の総資産は約2,090億ドルで、預金規模は約1,754億ドルに及んでおり、米国では、過去10年余りで最大規模の銀行破綻となった。

SVBは、余資を米国債などで積極的に運用していたが、昨年来の金利急上昇で債券の含み損が多額に発生したという。また、顧客の大部分を占めるテクノロジー業界や暗号通貨業界の新興企業が業績不振やVCからの資金調達の減少により、資金繰りのために銀行預金を引き出す傾向が強まった。それに対応するため、SVBは保有債券を売却せざるを得なくなり、損失が顕在化した。それがSVBの経営健全性への懸念を強めることになり、顧客が資金引き揚げを急ぎ、取り付け騒ぎ的な危機に陥った。ある意味、銀行破綻の典型的な図式である。

米銀では、銀行持ち株会社シルバーゲート・キャピタルが、経営難から銀行業務の縮小と清算計画を発表した。SVBも一度は増資に動いたものの不調に終わり、カリフォルニア州当局がFDICを管財人に選任して、傷が広がらないうちに業務を停止させたというわけである。

SVBやシルバーゲートの資産規模からいって、米国経済や金融業務への影響は限定的だろう。イエレン財務長官は、銀行システムの強靱さに変わりはないと述べている。ただ、厄介な点は、こうした銀行破綻の背景には、金利の急上昇という要因があることである。SVB同様に、資産ポートフォリオを傷めている金融機関はないとはいえない。過去には、ロングタームキャピタルマネジメント社やリーマンブラザーズなど、金融機関の破綻が、経済危機への入り口となった例もある。インフレ率高止まりの中、米FRBは積極的な金融引締め姿勢を維持しているが、政策判断に影響が全くないとは言えそうにない。

海外在住日本人のための「お金の勉強会」セミナー お申し込み(詳細は上記ページにてご確認ください)

※「Send」ボタンをクリック後、ボタンのすぐ下にお申し込み完了をお知らせするメッセージが表示されますのでご確認ください。

    お名前*

    お電話番号*

    メールアドレス*

    ご希望日

     5月27日(土) 10:00- (満席につき募集締め切りました)

    5月27日(土) 13:00-

    その他
    (参加人数
    参加者連絡先
    お子様人数
    投資経験などをご記入ください)


    ※「Send」ボタンをクリック後、この上にお申し込み完了をお知らせするメッセージが表示されますのでご確認ください。


    ※2営業日を過ぎてもお申し込みご確認のメールが届かない場合には、システム上のお手続きが正しく終了していない可能性がございます。お手数ですが WOMお問い合わせ先 までご連絡くださいますようお願いいたします。

    長谷川 建一

    国際投資ストラテジスト

    シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    著書
    ブログ: HASEKEN
    寄稿中

    関連記事...

    バックナンバー情報..