今回も為替リスクのお話です。日本円と米ドルの関係は、かつて1ドル=360円の固定相場制が、変動相場制に移行してから、大きな円高のトレンドがありました。1ドル=80円を下回った時期もあったほどです。
前回、外貨で運用するリスクを説明しました。為替レートが外貨安に動いてしまえば、外貨運用の結果は大きく違ってしまいます。しかし、金利を安定的に稼いでいくタイプの保険や債券投資であれば、運用する時間が長ければ長いほど、お金は着実に増えていくことも事実なのです。
では、ここで、330万円持っているAさんが、1ドル=110円の為替レートのときに米ドル運用を3万米ドルで始めるとしましょう。ちょうどお子さんが生まれて大学に入るときの入学金にしたいので18年間運用します。米ドルの金利は4%(複利)ですが、日本円の金利はゼロとします。
以前「72の法則」※で御紹介しましたが、4%で18年間複利運用すると、(4×18=72ですので)投資した3万米ドルは18年後6万米ドルになります。日本円のまま330万円を持っていても、銀行に預けても金利ゼロですから18年後も増えることなく330万円のままです。
18年後、為替レートが1ドル=110円だったら、6万米ドルは660万円です。気になるのは極端に円高米ドル安になった場合です。1ドル=55円のときに6万米ドルを円に戻すと330万円になり、この場合はわざわざ米ドルで運用しなくてもよかったな、という結果になります。そこまで、円高にならなければ、円換算でも元本割れの投資にはなりません。
世の中には何が起こるかわかりません。1ドル=55円も有り得ないという断言は出来ませんが、それをどう考えるかは皆さんの判断です。米ドル運用では、3万ドルを18年間4.0%複利で運用すれば18年後は6万ドルに成長します。また、円高米ドル安の可能性だけではなく、円安米ドル高になることもあります(ちなみに18年後1ドル=150円の場合は、6万米ドルは900万円になります)。
かつて米国FRBトップだったグリーンスパン元議長も、「為替レートの予測は非常に難しく、明日のことも予測は出来ない」と言ったことがありました。為替には、一喜一憂するのではなく、長期的な目線で見てください。一方、着実に運用できる機会は活かして、しっかり運用し元本を大きくすることが、将来への大きな備えになるのです。着実な手段があれば、何もしないことが、一番良くないといえるでしょう。