コラム お金の知識を高めるコラム Vol.11 長期投資の意味

お金の知識を高めるコラム

Vol.11 長期投資の意味

 先月号の反響が大きかったので、今回はその補足説明をします。

 

 72の法則を改めてご説明すると、「年利率」×「運用期間」=72、になる組み合わせで資産を複利運用することができれば、金利の複利効果により運用元本は2倍にすることができます。運用期間が5年ですと、72÷5=14.4ですから、年利率14.4%で5年続けて運用しなければなりません。運用期間を長くして、20年であれば、72÷20=3.6ですから、3.6%で運用すれば良いのです。昨年の株式市場は世界的に、上昇しましたが、15%程度です。株価は、上下動が激しく、毎年これだけの運用ができるかは見通せません。したがって年利率14.4%の運用を5年間続けることは容易ではありません。しかし、年利率3.6%の運用は、例えば、米ドル建てであれば、長期の債券や保険で、見通せます(信用リスクなどは残るため、絶対ではありません)。

 

 債券は、個人が購入するためには、まとまった金額を必要としますので、長期運用を確実にするために、保険商品があります。一例ですが香港では、予定積立利回りが、4.00%(年利)から4.50%程度と好利回りで運用する保険商品を購入することが可能なのです。

 

 皆さんは、保険で資産を運用すると聞くと驚かれるかもしれません。日本では、保険というと死亡保険を連想される方がほとんどですが、かつては運用型の貯蓄保険や年金保険も販売されていました。しかし日本円の金利が低下し、運用ができない環境では、そうした保険を販売しても保険会社は逆ざやになり、収益になりません。
そこでこうした保険を「売り止め」てしまったのです。しかし米ドル建ての保険などでは、まだ利回りがあります。円への為替手数料などを考慮しても、長期で運用すれば受け取る資産は元本を大きく上回ります。

 

 加えて気をつけていただきたいのは、日本人の方は、日本に居住していると日本国外の保険会社を引受会社とする保険を購入することが出来ません(保険業法186条2項8※)。しかし、タイに駐在、居住されている皆さんには、この規定が適用されません。また、この規定は購入時のみを制限するもので、日本非居住中に契約した保険が無効になることはありません。海外の保険を利用して長期運用、将来への備え、をしておくことは海外に居住している間にしかできない資産運用の手段の一つなのです。

※日本に支店等を設けない外国保険業者に対して日本に住所若しくは居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に係る保険契約の申込みをしようとする者は、当該申込みを行う時までに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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