コラム お金の知識を高めるコラム Vol.70 肩透かしの中国経済回復

お金の知識を高めるコラム

Vol.70 肩透かしの中国経済回復

今年第2四半期に入っても、中国経済の回復は道筋が見えていない。国内需要は弱いと言わざるをえず、金融市場では中国政府による景気底上げへの政策発動期待が高いものの、政府には具体的な動きが見えない。中国本土株の指標であるCSI300指数は、今年に入って4カ月余り、4,000ポイントを挟んだ攻防を続けているが、方向感を見いだせず、焦れた展開が続いている。中国政府の成長率底上げへのコミットメントは明らかではあるが、具体策の発動なしで景気回復期待がどこまで引っ張れるものか、やや懐疑的にならざるを得ない部分もある。

中国国家統計局が5月中旬に発表した4月の経済指標では、今ひとつ盛り上がらない国内需要が透けて見えた。個人消費や工業生産の伸びが予想に反して弱まっており、景気回復の勢いに弾みがついていないことが示された。国家統計局ですら、国際的に複雑かつ厳しい環境にあり、内需はなお不十分で回復に向けたけん引役はまだ強くないと認めたほどである。

消費者物価指数CPIは前年同月比0.1%上昇にとどまり、3月の同0.7%上昇から、伸びは大幅に縮小、約2年ぶりの低水準となった。生産者物価指数PPIも前年同月比で3.6%低下と内需の伸び悩みと商品価格下落が響いた。小売売上高は、4月に前年比18.4%増加したが、これも前年同月比では20.0%増を上回ると予想されていた。新型コロナ対策の方針撤回で勢いづくと期待されたが、実体はそこまで伸びていない。鉱工業生産は前年比5.6%増加で、生産高の伸びも3月の同3.9%から加速、伸び率では2022年9月以来の大きさとなった。しかし、比較対象となる昨年4月は大規模ロックダウンが実施されて急減していたことから増加幅はもっと大きくなると予想されていた。粗鋼生産は前年同月比1.5%減、前月比3.2%減と振るわず、鉄鋼需要が弱いことが顕にした。景況感も、需要の低調ぶりが影響し始めており、製造業購買担当者指数PMIは49.2と3月の51.96から一段と低下し、経済活動拡大・縮小の境目である50を下回ってしまった。

失業率は5.2%で3月の5.3%から低下した。ただ気がかりな点は、若年層の失業率で20.4%に上昇と、過去最悪だった2022年8月の19.9%を大きく上回った。中国では労働力人口は減少に転じているが、今後、労働力のコアとなる若年層を吸収することができないとなるとツケは長引くだろう。若年層の雇用安定・拡大に向け一段の取り組みが必要なことは明白である。

中国人民銀行による金融緩和や中国政府の景気下支え策の発動が遅れるようだと、中国経済は、試練の時を迎える可能性すらある。その場合は、今年、高い経済成長が期待されているアジア経済の成長にも影響が及ぶだろう。注意が必要である。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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