金融庁の金融審議会・市場ワーキンググループが発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」については、本コラムでも2度触れました。少子高齢化社会がこれから直面していく、将来の生活資金不足を把握し、これからどんな準備をしておくべきか、年代別に対応も推奨されることがはっきりと書かれたとてもよいレポートです。金融庁のホームページからダウンロードできますので、皆さんもぜひ一読ください。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
実はこの報告書レポートは、金融サービスを提供する金融機関側も、どうあるべきなのかについて書かれています。まず挙げられているのは「金融リテラシーの向上」です。日本ではお金の管理のしかたなどを含めた投資教育には、子供も大人も時間が割かれていません。クレジットカードの仕組みを的確に説明できなかったり、多様化するモバイルペイを使ったお金の支払いに戸惑ったり、401Kプランの選び方に苦労したりしたことはありませんか? 金融リテラシーは、日々の積み上げでしか向上しません。興味を持って少し調べてみるだけで随分変わりますよ。金融機関はもっと投資教育の場を提供するべきだと思います。
そして「資産形成や資産承継制度の充実」が大切だということも書かれています。「資産を形成」するには若いうちから少額でもこつこつと積み立てたり、貯めていくことが重要です。投資の基本は分散・積み立て・長期投資だということは、本コラムでも繰り返し申し上げていますが、他の王道はないというほど重要なことなのです。そして、どうやって両親などから資産や事業を引き継いでいくのかも、とても重要なことです。何かが起こってしまってからですと、手遅れになるばかりです。金融機関は正しくタイミングも考えてアドバイスをするべきでしょう。
次に「アドバイザーの充実」ということも提唱されています。日本の方に多い悩みは、何処で誰にアドバイスを受けたらよいか分からない。というものです。ここに行けば、この人なら、必要なアドバイスを的確に受けられる、というような世の中になってほしいと思います。
最後にもう一つ大事なことは「高齢顧客保護」です。日本では、保険で新商品が出ると乗り換えを勧めたり、無駄になるのがわかっているのに新商品を購入させるような勧奨が大規模に組織的に行われていたことが大問題になりましたね。金融機関が収益を上げるためだけに、顧客の利益を損ねて販売行為に走るなどということは許されることではありません。特に、判断能力が衰える可能性のある高齢者を狙って、そうした営業をすることは厳に慎まなければなりません。金融機関やアドバイザーとの付き合い方、しっかり考えてみてください。