9月1日、外国為替市場ではニューヨーク時間の取引で、ドル円レートが1ドル=140円台にのせました。翌日には、144円台まで一気に上昇する円安が進行、24年ぶりの円安・ドル高の水準をつけました。
背景には、米国経済指標は堅調であり、米FRBが大幅な利上げを継続する見通しが強まる一方、成長戦略を描けていない日本経済の先行きは見通せず、日銀の金融政策は緩和状態を維持せざるを得ないとの見方が変わっていないことがあります。このため、日米金利差は拡大する方向感が鮮明となり、市場参加者は、米ドル買いを一方的に進めています。主要通貨間では、米国経済の安定感と欧州の地政学的リスクへの不安感から、米ドルが世界の主要通貨に対して続伸していることも、ドルを買う安心感に一役買っています。
日本政府の動きは鈍いとしか言いようがありません。鈴木俊一財務相は、最近の為替相場の変動について「高い緊張感を持って注視」すると冷淡なコメントを出すばかりで、為替介入の可能性すら取りざたされません。為替に人為的な操作をすることへのアレルギーを示す米国の反対にあい、日本政府は為替介入すらできないと見透かされています。日本政府単独では、為替介入したとしても円安の流れを阻むことはできないでしょう。
引き続きドル円は140円台で上値を試す展開が予想されます。中長期には、170円や200円などといった水準までの円安を予想する声も出ています。テクニカル分析では、1998年8月に記録した147円66銭まで140円から147円までには目立ったポイントが見当たらないことも事実です。いわば真空地帯ともいえるドル円相場の140円台は、あっという間に円が下落してしまうようなことが起こっても不思議ではありません。円安には更に注意を払っておきましょう。
このコラムでは、たびたび円安のリスクについてお話してきました。現実に円安が進むと、日本の輸入物価は上昇し、日本人が持つ円資産は目減りしてしまいます。不測の事態に備えて、円資産だけではなく、ドルなどの外貨資産を持ち、「分散投資」を着実に進めていくことが重要です。円安の進行は、行動を起こしてきた人と行動しなかった人の格差を大きくしました。是非、「分散投資」による「資産防衛」を真剣に考えて、行動を起こしてください。