コラム お金の知識を高めるコラム Vol.87 分散投資のためのオルタナティブ投資

お金の知識を高めるコラム

Vol.87 分散投資のためのオルタナティブ投資

昨今の金融市場では、株と債券が同時に下がってしまい、分散投資の効果が得られないケースが増加しています。そこで注目されているのが「オルタナティブ(=代替)」資産です。

オルタナティブ投資には、大きく分けて2つの種類があります。一つは、伝統的な資産である株や債券に影響を受けるものには一切投資をしない投資戦略です。たとえば、コモディティ(原油・金・穀物など)投資がこれにあたります。

もう一つは、株や債券の動きに影響を受けるものを組み入れる方法です。しかし、単純に株や債券を買い持ちにして、その値上がり益を待つ『ロングオンリー戦略』とは質を異にします。ロングオンリーの戦略では、株や債券が下落している間は我慢するしかありません。その間の時間は辛く、場合によっては長くなります。その間の精神的な苦痛は大きく、機会損失も大きくなります。そこで、株や債券の下落時でも、収益機会を作れるような投資戦略を開発していこうという潮流が起きています。

例えば、先物取引(ある商品原資産を将来の決められた日に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引)やオプション取引(将来の決められた日にちに決められた価格で買ったり売ったりする権利を売買する取引)を組み入れることによって、もし株価が下がっていっても、それからプラスのリターンを得られるような戦略を取るのです。

オルタナティブ投資というと、ヘッジファンド投資のようなレバレッジをかける(他人資本を使うことで投資効率を高める手法)ものをイメージする方も多いかもしれませんが、昨今はレバレッジを掛けた戦略に限らず、多様な戦略が開発されています。

伝統的資産だけで構成されたポートフォリオには限界があるということを知り、ポートフォリオに、株や債券とは異なる動きをする代替資産・オルタナティブ投資を含めることを、皆さんにも考えていただきたいのです。オルタナティブ資産を一部持つことで、分散の効いたポートフォリオを持つことができるようになります。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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