では、株の不確かなものとは何でしょうか?最近の残念な例としては、日本でも、総合電機メーカーや自動車部品の会社でも起こったことですが、製品の欠陥や経営上の不正・誤ちにより、株価が急落して、何分の一にもなってしまったことは、皆さんも見聞きされたと思います。企業の評価や評判が失墜し、収益に毀損が生じ、上記で述べたような収益獲得の持続性への期待が萎んだために、株価が急落したのです。当然、企業の価値そのものである、全株価の価値の合計、すなわち時価総額も急落しました。ひとたび、何か予想外のことが起これば、株価は激変するのです。一方で、買収や提携、新製品の誕生など、思わぬ材料で、会社の将来への期待が膨らんで、急上昇することもあり得ます。このように、株価は、たいへん変動しやすい性質を持っており、その変動率には注意が必要です。株式投資には、その変動率に対する覚悟が必要とも言えるでしょう。この株の価値の変動そのものを、「リスク」として認識する必要があるということです。ただ、企業は、長期で成長することを目指して運営されていますので、長期的に保有できるもの、自分の目で見て安心感の高いものを選んでいくことが肝要でしょう。
「株式」を考える際に、他に考えるべきものとしては、配当や株主優待があります。配当とは、企業が獲得した収益の一部を、株主に還元・分配するものです。日本の企業も、最近では、配当を厚めにする傾向があり、企業収益に対する配当の割合も随分上がってきました。配当の割合を配当性向と呼んで、それを重視する投資のスタイルもあります。低金利の環境下では、配当を重視する投資スタイルを採る投資家も増えました。
また、企業が株主に対して、金銭ではなく、自社の製品を配布したり、自社施設を割引で利用できるような仕組みを提供することがあります。鉄道会社の全線パスや、航空会社の株主専用の割引券が特に有名ですが、こうした仕組みを株主優待と呼びます。初心者向けの株式投資ガイドには、それらをことさら強調して株式投資を推奨するものもありますが、配当や株主優待は、企業収益に拠って結局は支えられています。やはり、企業収益の動向をしっかりと見ていくことが株式投資の基本と言えるでしょう。
次回12月号は、債券について解説する予定です。