コラム お金の知識を高めるコラム Vol.21 景気循環と資産運用(後編)

お金の知識を高めるコラム

Vol.21 景気循環と資産運用(後編)

  株価などの資産の変動(振れ)は、その平均値を取って年率(%)で表示されます(変動率)。2016年・2017年は変動率が低い相場が続きましたが、今年は年初から変動が激しく、市場が見通しにくく、資産運用にも工夫が必要になります。 景気が拡大している好況期には、株価や資産価格が全体として上昇する傾向にあり、買って持っておけば利益を上げることは比較的容易です。しかし、後退期から不況期は、株価が上がりにくいばかりか下落する銘柄も出てきます。そのため、安定した銘柄や下がりにくい銘柄を選ぶことが重要になってきます。

 

 それには情報集めが重要になります。会社や業界の特徴、景気後退期の銘柄の特徴、等を踏まえて投資判断をしなければなりません。一方で、株価や資産価格が調整されたり下落するということは、安く買える機会と捉えることもできます。前回書いたように、景気循環は比較的長期では確実に見られますので、長期投資の視点に立てば、その会社が破たんなどしなければ株価が上昇することが期待できます。また、規制緩和など社会的なルールの変更や他社の買収によって会社が業績を大幅に伸ばす機会も増えることがあります。

 

 また、景気成熟期から後退期には、金利が下がる傾向にあります。この時期、債券は価格が上昇することになります。利付債ならその保有者に年間で支払われる利払い(クーポン)額は一定です。債券の発行体(国債ならば国、社債ならば会社)が破たんしなければ、確実に一定期間ごとに利払いを得られる他、債券の額面にあたるお金は満期になると償還払い戻しされます。例えば香港市場には米ドル建ての、アジアの国々や中東の産油国などの国債や、有名企業の社債もあります。株式運用に固執せず、債券でお金を運用するという発想も検討に値するのです。見通しが悪いから何もしないのではなく、長期の時間軸で投資を考えましょう。アジア債券などを含む海外市場には、いくつかの債券を組み合わせたファンドもあり、個人でも手頃に買うことができるチャンスがあります。海外居住のメリットはここでも生かされます。まずは勉強し、正しい知識を身に付けましょう。

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    長谷川 建一

    国際投資ストラテジスト

    シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    著書
    ブログ: HASEKEN
    寄稿中

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