コラム お金の知識を高めるコラム Vol.107 「利上げでも円安」
Vol.107 「利上げでも円安」
6月の金融政策決定会合で、日本銀行は政策金利を0.25%引き上げ、年1.00%とすることを決めました。本来は金利を上げると通貨高になりやすいのですが、為替市場は今回の利上げをほぼ予想していたため円高方向にはほとんど反応しませんでした。1米ドル=160円20銭台を維持しています。「利上げしても円安」圧力は拭えません。
これは、日本の金利より、アメリカなど海外主要国の金利の方が絶対水準が高い事、日銀の利上げペースが緩慢であること、物価高原油高などで日本の貿易収支が悪化しており、円売りに傾きやすい構図にあること挙げられます。日銀は長年続けたマイナス金利政策やゼロ金利政策を解除し、段階的に政策金利を引き上げてきました。インフレを抑えるためには、ある程度の利上げは必要なのですが、急激に金利を上げると景気悪化を招くリスクが大きくなります。そのため、日銀はかなり利上げに慎重な姿勢を取りました。
しかし、円安と資源高で輸入物価が押し上げられ、生活コストが上昇するスピードには追いつかず、金融政策の変更が後手に回ったとの評価が定着しつつあります。ビハインド・ザ・カーブと言われる悪い現象にハマった感すらあります。加えて、相変わらずの日本の構造問題や財政赤字エネルギー不安もボディブローのように、円安圧力として効いてきています。
有効な円安阻止手段を持たない現状は、日本にとって大変厳しいと言わざるを得ません。金利も上がるのに円安も進む状況は、家計には大変厳しい局面です。
長谷川 建一
国際投資ストラテジスト
シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)
著書






