コラム お金の知識を高めるコラム Vol.52 カップリングとデカップリング

お金の知識を高めるコラム

Vol.52 カップリングとデカップリング

読者の皆さんは、カップリングやデカップリングという言葉を聞いたことはありますか? 2000年以降、世界経済のグローバル化が飛躍的に進み、サプライチェーンが国際的に広範囲に整えられて、モノやお金が活発かつ広範囲に動くようになりました。そうして世界各国の経済は相互の連動性を強め、特に経済的に規模の大きいアメリカや中国の影響力は強くなりました。そのため、アメリカや中国で何か不測の事態が発生すると、その影響は世界全体に及ぶようになりました。

また、インターネットなど情報通信網の発達に伴って、情報の伝達スピードが速くなり、世界のどこにいても情報を容易にやりとりができるようになりました。そうすると、金融市場や経済の結びつきは深まり、類似する資産クラスの動きは格段に連動しやすくなりました。金融市場や経済において、市場や国境を跨いで資産価格や経済サイクルが連動して動くようになることをカップリングと言います。

しかし、トランプ前大統領の登場で、経済合理性よりも、それぞれの利益が前面に押し出されたことで、国家間の摩擦が強まりました。米中関係の緊張はその一つの表れです。経済のグローバル化にブレーキがかかるようになり、カップリングの流れに変化が生じました。カップリングとは逆に、資産価格や経済の動きが連動しなくなることをデカップリングと言います。

そして、昨年初めからの新型コロナウイルスの世界的な感染大流行は、各国独自が感染抑制のためとはいえ行動規制を強いられることとなり、グローバル化の流れは大きく変容しました。サプライチェーンもずたずたに分断され、モノ不足で生産が間に合わない事態も各国で発生し、いまだに完全な復調には至っていません。米中欧の関係にもギクシャクしたところがあるうえ、感染状況の差は自ずと各国の協調性を損なっています。

金融市場がこのままデカップリングの色彩を強めるのか、カップリングの傾向に回帰するのか、2022年の相場を予想する上で大事な視点になるでしょう。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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