前稿では「債券」の不確かなものとして、発行体が破綻すること(クレジットリスク)をお話しました。それ以外には何が、リスクと考えられるでしょうか?それは、市場金利との関係を考えれば分かります。前稿で例で挙げた、5年後の2022年12月20日を償還期限として、年に二回5.00%(年率)の利払いを条件に発行された債券を再度考えて見ましょう。もし、同じ期間で5.00%(年率)よりも高い利回りで他の手段で運用ができる環境であったら、どうでしょうか?この債券を持っている投資家は、それを売却して他の手段を選択をします。つまり、この債券は売り圧力から価値が下がるはずです。債券は、発行されたときには、額面に対して100の価値で発行されるのが普通です。従って、100の価値は下がっていくことになります。一方で、同じ期間で他の手段は5.00%(年率)よりも低い利回りでしか運用ができない環境であれば、前述の債券の価値は高まります。つまり、債券は市場の金利との裁定が働いて、それとの比較で、価値が上下するのです。これが債券の価格リスクで、市場金利が大きく動く際には、注意が必要です。「株式」に比べれば、「債券」の価値の変動幅は一般的に小幅で緩やかです。
他には、市場が荒れたときに、買い手が不在となる場合もあり、これは流動性リスクと呼ばれます。ただ、流動性リスクは、「株式」にも当然ありますので債券特有のものではありません。従って、元本の返済が予定されているという点で、「債券」のリスクの大半は発行体の信用度に集約されます。
「債券」と「株式」の違いは何でしょうか?前回解説したとおり、「債券」は、その発行主体(国や企業など)がお金を借り入れるときに発行する借金の証文です。つまり、借りたものはあらかじめ約束された条件(金利の支払いなど)を履行して、満期日には返済する義務が生じます。万が一、それを履行しなければ、債務不履行(デフォルト)となり、発行体はつぶれてしまいます。経済原則から、しっかりとその履行が約束されているのです。
一方、「株式」は、会社そのものの価値を小分けしたものであり、投資家が投資したお金は会社の資本として組み入れられています。会社は、解散する場合以外には、資本を投資家に返す必要がなく、返済に応じる必要もありません(自発的に自社株買いなどで株式を買い入れる場合を除く)。なお、投資家(株主)は、他の投資家に保有する株式を売ることで、投資を回収することが出来ます。