日本政府は9月22日に24年ぶりの円買い・ドル売り介入を実施しました。介入額は2.83兆円で、一度の介入額としては過去最高額と推定されています。ドル円為替でドル高が進んだ要因は、金利差とその拡大にあります。米FRBは積極的に利上げする姿勢を明確にする一方、日本銀行は金融緩和を継続する姿勢です。9月21日の米FOMC、22日の日銀政策決定会合で、それは再確認されました。そのため、円売りが進んで一時1ドル=145円90銭まで円が下落したのです。このままでは150円に届きかねない状況だと市場参加者も考えた矢先のタイミングで、日本政府は円買い介入を実施しました。この介入には効果があったと言えます。
ただ、円買い介入を続けられるかというとそうではありません。円売り介入は、日銀が円を供給すれば良いだけなので、市場で無尽蔵に円を売却できます。しかし、円買い(ドル売り)になると、市場で売却するためのドルが必要となり、理論的には国が持つ外貨準備高のドル分までしかドルを売れません。日本は2022年8月末時点で外貨準備を約1.3兆ドル(円換算で185兆円)を持つ世界第二位のドル保有国ですが、それでも上限はあります。
また、投機だけではなく実需も考慮しなければなりません。日本は経常赤字に転落した上、対外証券投資も加味すると、年間で計30兆円超のドル買い実需があると推定できます。これは外貨準備の6分の1程度になります。
最近、英國では大型減税案が市場から散々な評価をされて、財政破綻懸念から英ポンド売り、英国債売りを浴びせられ、金融危機の様相を呈しました。イングランド銀行(中央銀行)は、緊急避難として英国債を買い入れ危機を回避しました。金融危機は、新興国で起こるものとされてきましたが、新興国に限らず先進国でもこうした事態が起こりうることを英國の現状は示しました。日本政府の抱える債務の規模も巨額で、対GDP比では英國の水準よりも悪いことは周知の事実です。今後、もし金利の上昇が不可避となった時、債務問題は利払い負担を通じて、日本政府に重くのしかかります。英國で起きている英ポンドと英国債の急落は、日本にも起きることかもしれません。
日本政府は既に円買い・日本国債買いに手を染め、金融危機に際して発動される手段を採っています。これは偶然ではないことに注意しておくべきでしょう。