今回の米国大統領選挙、現職のバイデン大統領が2期目を狙う民主党は他に候補がなく、返り咲きを目指すトランプ前大統領が共和党候補としての指名を獲得し、早くから選挙戦が始まっていました。しかし、討論会でのパフォーマンスから、高齢のバイデン氏を候補として選挙を戦うことに疑問の声が強まり、更に、NATO首脳会議でバイデン氏がゼレンスキー・ウクライナ大統領を呼び違えると、高齢はバイデン氏のクリティカルな問題としてエスカレートすることとなりました。
そして、民主党首脳の説得に応じる形でバイデン氏は次期大統領選挙から撤退し、ハリス副大統領を候補として推すと表明しました。バイデン氏は再選を目指す取組みを断念した理由として、大統領選挙と同時に行われる11月の連邦議会選挙で民主党候補の当選のチャンスを損ないかねないと述べました。ハリス副大統領は、8月の民主党大会を前に、選挙人の多数から賛同を取り付け、正式に民主党の大統領候補となりました。
選挙戦を有利に進めているとされていたトランプ候補にとっては、最も悪いシナリオが現実となった感はあります。副大統領候補にはバンス上院議員(オハイオ州)を選び、保守派へのアピールを強める戦略でしたが、バンス氏の過激な言動や過去の多くの変節が批判にさらされるなど、功を奏しているとは言えません。
ハリス候補は中道派や地方の有権者の共感を呼び、ハリス氏自身とのバランスが取れるワルツ知事(ミネソタ州)を選びました。ただ、民主党左派に偏っているという印象はあり、今後どのように民主党中道派や無党派層に支持を拡大するかは課題です。
世論調査でも、バイデン候補に対してはリードを保っていたトランプ候補でしたが、ハリス候補の登場で形勢は逆転し、勝利を分ける競合州であるラストベルトと呼ばれる州でさえ、苦戦が伝えられるようになっています。「もしトラ」ではなく、「もしハリ」などという言葉も聞かれるようになりました。
9月、10月には、大統領・副大統領候補同士による討論会が開催されます。直接議論しあい、時には罵り合う中で、リーダーとしての強さや資質などを判断していくことになります。
世論調査はさまざまに出てくるでしょうが、投票日まではどちらが勝つかわからない選挙戦になるでしょう。11月5日の投票に向けて、何が起こるかわからない「不確実性の高い」選挙戦が展開されます。