皆さんは、TikTokやWeChatというアプリを使っていらっしゃいますか?
8月6日、トランプ大統領は「TikTok」と「WeChat」を米国居住者が使用することを禁止する大統領令に署名しました。米国民の個人情報が中国政府に収集されると、国家安全保障上の脅威となるリスクが高まることが理由です。対米外国投資委員会(CFIUS)はTikTokを運営する会社の親会社であるバイトダンス社に対し、米国内で同事業の売却を9月15日までに完了するよう求めていましたが、それを後押しする形での大統領令の署名となりました。
米国の政治の動きは、中国を仮想敵と想定した国家安全保障上の懸念が強くなってきています。その傾向は、党派を問いません。11月の大統領選を前に、共和党・民主党も覇権を争う中国を叩く姿勢は、票に繋がり、プラスになる考えているようです。トランプ大統領が大統領令に署名した同日、米国議会上院ではTikTokアプリを政府職員が持つデバイスにダウンロードすることを禁止する法案を可決しました。
様々な分野で既に覇権を争う中国に対して、米国の攻撃的な姿勢がエスカレートしかねない点には注意が必要でしょう。特に、今後の基幹産業の一つとも言えるテクノロジー産業をしっかりと押さえるためには、あらゆる手段を講じて中国を攻撃すべきという論調が出てきていることも気になるところです。トランプ大統領が署名した大統領令の発効は9月中旬ですが、本格的なテクノロジー産業の分断の始まりとなるかもしれません。そして、急速に世界に普及・拡大したインターネットも、米中2大陣営に分かれて、分断されてしまうかもしれません。
世界の他の国でも、そうした傾向が出始めていることも気がかりです。インドはティックトックやウィーチャットなどを含む数十のモバイルアプリを禁止しました。オーストラリアと日本でも同様に、中国企業の息のかかるアプリに何らかの規制を掛けることを検討するようです。こうした動きが強まり、テクノロジー産業の分断を招いてしまうと、高い成長が期待されてきたIT企業群の未来にも影響が出るでしょうし、3月の急落から急速に値を戻した株式相場を牽引してきたIT企業の株価にも暗雲が漂うかもしれず、心配のタネになりかねません。事態の推移には注目する必要があります。