お金の知識を高めるコラム

Vol.80 金価格の上昇

金の価格が上昇しています。2024年3月11日には金1gの価格は11,271円をつけました。円建てでの価格は30年前の約10倍になっています。金を取り扱う業者の店頭には換金売りをする投資家の列ができているとの報道もありました。

金は古くから現物の信用度があり、換金性も高いことから投資の対象となってきました。そして、金相場はインフレと金利、マクロ経済のリスクや地政学的なリスクの増減により変動してきました。

1980年代は世界の緊張緩和や高金利により金価格は低迷しましたが、2000年を境に、下落トレンドから上昇トレンドへ転じました。2001年にはITバブル崩壊による経済的な混乱と世界同時多発テロが起こり、2003年にはイラク戦争が勃発します。2007年にはサブプライムローンが不良債権化する問題が起こり、2008年にはリーマンショックを迎えます。株式や債券、通貨といった伝統的な投資対象への信用が失われ、代わって金へのニーズが増大しました。

その後は、低金利の環境のもと、金利を生み出さない金の価値は相対的に再評価されていきます。また、世界が調和し一体化していくというグローバリゼーションの流れに変化が起き、地政学的リスクが増大することで金価格は上昇していきました。2020年のパンデミックの発生も金価格の上昇に寄与しました。新型コロナウイルスの感染拡大は、世界の政治・経済への不安を拡大させ、ドルベースでは1オンス=2,000ドルを超えました。

2022年に起こったロシアによるウクライナ侵攻、2023年に始まったイスラエルとハマスの戦闘も近年では規模の伴った軍事紛争で、これも「有事の際の安全資産」としての金の位置づけをより明確にしました。米地銀の破綻も金融のシステミックリスクを意識させ、金の相場に影響を及ぼしました。

こうしてみると、世界の政治経済のパワーが分化し、対立が起こり、混沌とした状況に陥ることが懸念される中、金へのニーズは強まりこそすれ、弱まることは考えにくい状況です。資産のポートフォリオの一つとして、金の位置づけを改めて考え直して見る必要がありそうです。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

関連記事...

バックナンバー情報..