コラム お金の知識を高めるコラム Vol.78 2024年は『ディスインフレ』に注目

お金の知識を高めるコラム

Vol.78 2024年は『ディスインフレ』に注目

パンデミック以降、急速に物価が上昇したことを読者の皆さんも実感していらっしゃると思います。特に2022年からは、目に見えるほどモノの値段が上昇しました。これを抑制するために、主要な国のほとんどで採られた政策が、金融引き締めによる金利の上昇でした。

金利を引き上げると、資金コストが上昇します。そうすると、企業や個人は借入を控えるようになり、資金需要が減ります。資金の流動性が下がると、人々の消費購買意欲も低くなり、需要と供給に左右される物価にも下げ圧力となります。こうして、今は物価の上昇に歯止めがかかり始めている状況と言われます。

そのため、今年、2024年は物価の上昇が緩やかになっていくことが期待されます。これをディスインフレと呼びます。物価が下がるデフレーションとは異なることに注意してください。ディスインフレとは、インフレーションから抜け出し、物価の上昇率が低下していく状況で、需要減退・供給過剰から起きるデフレーションとは違います。

需要が供給を下回ると物価は下がっていきます。ディスインフレがトレンドとなり、物価上昇圧力が主要中央銀行の目標である年2.0%に近付いていくと、今度は、高い水準に引き上げた金利を下げる、という操作が始めると期待されます。

金融市場では昨年12月ごろから、主要中央銀行が2024年半ばには、利下げを開始するとの観測が強まってきました。ただ、市場は過剰に反応することも事実です。年末年始は景気の失速懸念も加わって、市場は「より早くより急速」な利下げを織り込むようになりました。本稿の執筆時点(1月12日)で、米FRBによる利下げ幅は計1.50%にまで拡大することを織り込んでいます。

物価は果たしてそこまで順調に落ち着くでしょうか? ディスインフレの流れは明確になるでしょうか? インフレがメインテーマだった2023年とは大きく異なりますが、読者の皆さんはしっかりと注意を払ってください。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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