コラム タイ野菜でべジフルライフ 第8回 ハヤトウリ(ファクメオ)

タイ野菜でべジフルライフ

第8回 ハヤトウリ(ファクメオ)

ハヤトウリ
Chayote/Vegetable Pear
ฟักแม้ว (ファクメオ)

日本で見たことがなく、タイで初めて見る野菜をなんでもかんでもタイ野菜と言いそうになりますが、タイが原産の野菜というのは、実は少なかったりします。市場でディープな姿で並んでいると、なかなか手を出しにくいものですが、地中海原産なんて聞くと、急におしゃれな野菜のような気がして、なんともゲンキンだなあと我ながら思います。ヨーロッパや多くの国で愛されていることを知って、それを上手に使いこなせたら、ちょっと国際人になったような得意な気分になったりして!?

 

ハヤトウリは、まさにそんな野菜です。表面に刺があり、デコボコで扱いにくそうな姿がいかにもタイ野菜。タイ語で「ファクメオ」と言います。ファクは瓜、メオはメオ族のことで、山岳民族の名前がついているなんてまさにローカル野菜。でも実際は、中南米原産で、世界中で親しまれている野菜です。もしや、日本人だけが、この野菜のおいしさに気がついていないのかも しれません。日本には、大正時代に鹿児島に伝わり、薩摩隼人にちなんで名がつきました。熱帯でなくても容易に育ち、別名「千成瓜」と言われるほどたわわに実がなる野菜なのですが、なぜだか流通していません。もっぱら漬物にされて、持て余され気味に農家のご近所さんたちで消費されているというモッタイナイ状況です。果実は、シャキシャキした瓜らしい歯応えとさわやかさがあり、他の瓜にはない上品な甘みがあります。タイでは、果実だけでなく蔓も食べられています。タイ料理店で「ヨー(ト)マラ」という名で炒め物になってでてきます。蔓もシャキシャキした食感で甘味があり、高級食材として扱っている国があるほどです。「ヨート」は蔓や若芽、「マラ」はニガウリのことで、ハヤトウリは正確には「マラ・ワーン(甘いニガウリ)」と呼ばれるのですが、なぜか「ワーン」が省略されがちです。

 

マヤ人やアステカ人によって栽培されてきた瓜で、スペイン人によって 世界に広められました。中国では、蔓になる様子が仏陀の手のようなので「佛手瓜」と呼ばれ、縁起物として贈り物に使われます。ゴツゴツして刺があり、色も形もいろいろですが、タイで見かけるのは、黄緑色で洋梨形、表面のトゲが少なく扱いやすい品種です。味は、冬瓜、大根、きゅうり、青りんご、梨を混ぜて割ったような感じで、風味よりも舌触りと歯ごたえを楽しむ野菜とも言われています。漬物はもちろん、カレーやシチュー、煮物やスープ、炒め物や蒸し物、生のままサラダなどとにかく幅広く利用でき、コンポートなどのデザートにもできます。世界中で食べられているということは、世界中の料理に合うということですね。

 

切ると白い液が出てシブシブすることがありますが、気になる人は、油を手に塗るか流水の下で皮を剥くといいでしょう。切ってから数時間放置するだけで甘みが増しますので、料理前に余裕があったら試してみてください。千切りにして干すと切干大根のように使えます。1個だけある大きな種は、加熱するとアーモンドのようなおいしさなので、料理に一緒に入れてしまいましょう。

 

水分ばかりと言われる瓜の中では全面的に栄養豊富です。ビタミンCとカリウムが特に目立ち、その他のビタミン、カルシウム、リン、繊維、カルボキシル酸、葉酸とたんぱく質、鉄などが含まれています。食欲増進効果、整腸作用、血圧降下作用が期待され、タイでは、骨と歯を丈夫にするので子供におすすめで、風邪の予防や解熱効果があるとされています。ハヤトウリの蔓や若い芽は、炒め物やおひたし風にして食べられます。ちょっと山菜風でもあるので、和風パスタにしたらおいしかったです。

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青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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