コラム タイ野菜でべジフルライフ 第74回 クワレシダ(パッ・クード)

タイ野菜でべジフルライフ

第74回 クワレシダ(パッ・クード)

クワレシダ
Vegetable fern
ผกักดู(パッ・クード)

私は、秋田の山の中で生まれ育ったので、季節になると祖父とよく山菜を採りに行っていました。山に遊びに行くのはいつも冒険のようでとても楽しみでしたが、自分で採った山菜でも特に喜んで食べたという記憶がありません。昔は、漬物か芥子醤油など食べ方も限られていて、子供には美味しいと思えなかったのでしょう。大きくなって、ワラビにマヨネーズとしょう油が妙に合うということに気がついて(単にマヨラーとも言う)、よく食べるようになりました。東京で暮らすようになってお酒もたしなむようになり、山菜の魅力に目覚めました。タイに来て、自分がどれだけ贅沢をしていたかに気がつきましたが、あれほど周りにあふれていた山菜は、食べたいと思った時には手の届かないものになってしまいました。今年も春になって、日本からどんどん「山菜が採れた」「山菜を食べた」というレポートがアップされ、まさに指をくわえて眺める状態になっておりました。ラッキーなことに、ゴールデンウィークに一時帰国したので、たらの芽やコシアブラを食べることができ、ばっけ(フキノトウ)味噌とワラビの塩漬けを持ち帰り、かなり心が満たされております。

 

実は、タイでも山菜を楽しむことはできます。もうずいぶん前になりますが、ターク県のキャンプでワラビにそっくりな植物を食べる機会がありました。山の中の水辺に生えているものだそうで、限られた土地のものかと思っていたら、バンコクの市場でも時々みかけるようになりました。それが今回解説する「パッ・クード」です。私の自著には、勘違いして「ミズワラビ」という日本語をあてておりますが、正しくは「クワレシダ」というものでした。

 

東南アジアやポリネシアなどに広く分布して食べられているシダの新芽です。日本でも沖縄、九州地方にありますが、全国的にはあまり知られていません。水辺や湿地帯に生え、不純物があったり汚染された土壌では育たないことから、クワレシダが生えているところはきれいな土地とみなされ、環境チェックにもなると言われています。もともとは野生のものですが、最近は、人気があるので商業栽培もされるようになっています。

 

成長が早いためか、アクが少なく手軽に料理できます。茎のかたい部分をとりのぞいて、茹でたり炒めると独特のぬめりが出ます。おひたしやサラダによく合いますし、もちろんマヨネーズしょう油もバッチリです。味噌汁にもいいですし、和風パスタにもいいですね。タイ人は、ヤムにしたり、オイスターソースで炒めたり、焼き魚と一緒にココナッツミルク入りのカレーに入れたりと、日本の山菜のイメージからすると驚くような食べ方をしています。タイでは、野菜としてだけでなく、ハーブとしても扱われています。βカロテンや鉄分が豊富で、それだけたくさんの効能があるということでしょう。一般にコレステロールや血圧を下げる作用があり、解熱効果、貧血など血液の病気にもよく、炎症を抑える働きがあるとされています。

 

残念ながら市場にいつもあるとは限りませんが、こうした珍しいものを探しに行くのも市場巡りの楽しみではないでしょうか?見た目はまさに山菜風ですので、すぐにわかるでしょう。雨季が旬ですので、ぜひ、探してみてください!

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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