コラム Dr.MANAのセンシュアルエイジング Vol. 85 デジタル弱小国日本に生きる私(その1、大阪万博に思う)

Dr.MANAのセンシュアルエイジング

昨年、マイナンバーカードの更新というミッション(※サイバー任務ではない)が舞い込んできました。封筒で届いた案内を開くと、必要事項を手書きせよという指令。そして役所で並び、担当の方と一緒に画面を見ながらポチポチ操作。書類もらって終了。

ーまるで昭和から時間が止まっているかのような手続き。書類が苦手な私は、地味に神経をすり減らしつつ「これ家のPCじゃダメなんかい…?」と心のなかで何度もつぶやきました。

一方、昨夏、デジタル先進国エストニアのタリン市役所へ視察に行ったときの衝撃といったら…。月曜朝の9時に市役所にいたのは、パソコンとにらめっこしている職員さん3名だけ。市民の姿は皆無。そりゃそうですよね。スマホやPCがあれば、ほぼ全ての役所手続きはオンライン完結。本当に用がある人だけが、デジタル機器アレルギーのごく少数の住民か、ハッカソン帰りの観光客(?)ぐらいでしょう。いっそもう“役所不要"説まで出てくる勢いです。

さて、大阪万博の事前ニュースで「チケット購入が大変わかりづらい」という話を耳にしました。実は来てほしくないんでは? と勘繰るレベル。AI大国なら国際イベントの運営も効率化されるはずなのに、日本だと相変わらずガラパゴスです。いっそアナログ万博を開けばいいんじゃないか、と私の中の“破れかぶれスイッチ"が作動し始めましたよ。「デジタルデトックス」と銘打って、“手仕事と伝統技術があなたを癒やす"系イベントを敢行。入国する人には“アナログ税"をいただいて、着物の着付けから墨絵のワークショップまで人間臭さ全開にしてしまえと。人力を惜しみなく投入するわけですからコストは上がりますが、その分、どこか懐かしくて豊かな体験ができるかも。ほんとうに“デジタル"の限界を感じて疲れた方には、ちょうどいい回復プログラムになるでしょう。

とにもかくにも、“デジタル弱小国"のひずみを身をもって感じる日々。もはや日本のアナログ力を逆手に取り、「それが日本の味なんだ」と言い張るぐらいの開き直りも、センシュアル・エイジングには大事かもしれません。何をやらかしても、書類の山に目を回しながら笑っていられたら、(国は貧乏になるでしょうが)きっと人生は豊かになると信じたい今日この頃です。

Dr. MANA(岩本 麻奈)

一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長/ナチュラルハーモニークリニック顧問医師/エッセイスト/コスメプロデューサー/美容ジャーナリスト 
皮膚科専門医。20年に渡るフランス滞在ののち、東洋のパリ“プノンペン”に転居。女性を元気に美しくする講演活動を続けている。「パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ」「生涯男性現役」(ディスカヴァー トゥエンティワン)「フランスの教育・子育てから学ぶ 、人生に消しゴムを使わない生き方」(日本経済新聞出版社)など、美容やライフスタイルに関する著作多数。近著は「結婚という呪いから逃げられる生き方」(ワニブックス)

公式HP: dr-mana.com   公式ブログ: ameblo.jp/dr-mana

関連記事...

バックナンバー情報..