何年か前のある春の朝のこと。両目の下にちょっとした膨らみがあることに気づきました。うーむ、これは… 認めたくないけどプロなら素直に状況を甘受しなければいけません。そうです、これは「目袋」です。ご存じのように涙袋は下瞼の際、眼球に沿った膨らみ部分で無条件にかわいい。目袋はその下にあって、脂肪が重力に負けて眼輪筋の緩みからはみ出したものです。これにはコスメもマッサージも効果がなく、形成外科的手技が必要です。
早速知己のドクターに駆け込んだところ、筋肉の動きを捉えながら熱心に触診なさいました。そして「これ、脂肪じゃなくてヒアルロン酸(hyaluronic acid)ですね。
以前に注入したものが残存しているんです。経験上9割方そうだと言えますよ」と。
えっ、確かにヒアルロン酸を入れたことはありますが、涙袋にですよ。涙袋から重力で落ちてくるの? 入れたのは何年も前のことです。そういえば頬骨の上部の深めにもヒアルロン酸を注入したことがありましたわ―、そこがちょい高いと若く見えるとかで、それも10年も前です。ヒアルロン酸は普通半年から1年で吸収されるのですよね?
ドクター、今度は難しい顔をして「年月が経つと、骨格の微細な形状が変わってくるんです。驚かれるでしょうが、部位によっては5年や7年前のヒアルロン酸が残っていることもざらにあります。まずヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)を一度入れてみませんか? 私の診たてが正解なら平らになってきますよ。一度の注入では足りないかもですが。問題は入れられたものが実はヒアルロン酸ではなく非吸収性フィラー(注入剤)だったり、不純物が多く入った不良薬剤だった場合です。その場合は組織に絡みついていて、何を入れても溶けません。掻き出すしかないのでかなり厄介です。なぁに、結果は1時間も待てばわかりますよ」とのご託宣。
すっかり脂肪とばかり思っていた私は半信半疑でした。しかしこの際、専門医のみなぎる自信に気押されて、その溶解術を受けることにしました。
それにしても、非吸収性フィラーなんておぞましい! 果たしてDr.MANAの目袋溶解になるのか、それとも目袋妖怪のままか。 (つづく)