2月24日、ロシアが突如ウクライナに侵攻しました。プーチン・ロシア大統領は、行動を開始する直前に記者会見を開催し、ウクライナ東部のロシア実効支配地域の独立を承認し、ウクライナ政府軍から親ロシア派住民を守ることを宣言しました。一方的な軍事侵攻の開始は、許されるものではなく、民間人の犠牲者がひとりでも少ないことを祈ります。
EUにも米国にもNATOにも、軍事同盟を締結していない、ウクライナへの表立った軍事支援はできず、ロシアはそれを見切って、侵攻を判断したようです。しかし、最初は足並みのそろわなかった西側主要国も次第に対ロ経済措置で協調し、ロシア政府・中央銀行関係の資産凍結やロシアの銀行を国際間の銀行送金ネットワークであるSWIFTから除外することを決めました。
SWIFTとは、国際間で銀行同士が送金情報をやり取りして、確実に送金を行うためにもっとも使われているネットワークです。これから除外されると、膨大なエネルギー資源の輸出を背景に経常黒字を抱えるロシアが原油や天然ガスを輸出したとしても、資金決済ができないという事態に直面します。これにより、事実上、輸出はできなくなり、国際市場から切り離さることになってしまいます。そのため市場では、まず原油の価格が急騰しました。一時はWTI先物で1バレル=123ドル台をつけました。ロシアへの経済制裁により、ロシア産原油が国際市場から締め出され、供給不安が広がるとの懸念が原油価格を押し上げたのです。
経済制裁がロシア経済に打撃となることを嫌気して為替相場でロシア・ルーブルは、史上最安値を更新して下落、1米ドル=145ルーブルまで下げました(3月10日)。市場全体では、紛争時の安全への逃避行動から、米ドルが大きく買われました。日本円やスイスフランも同様です。そして、米国でのインフレ率の上昇を受けて売り込まれていた債券も、利回り上昇が一服し、買われました。他には、金への需要拡大も目立ちました。金は2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大時につけた1オンス=2,000ドル台が視野に入っています。また、株式相場でも、ロシアのRTS株価指数は、昨年10月の高値1,891から約38.2%の水準である742をつけました(3月7日)。
いずれにしてもロシアが支払うことになる代償は小さくないようです。ウクライナ問題の長期化は、ロシア経済を一段と蝕むでしょう。