コラム 聞き上手な日々 第12回 カウンセリングの現場から

聞き上手な日々

第12回 カウンセリングの現場から

読者のご質問にお答えいたします

 読者の方から一番多かった質問にお答えいたします。基本的には個別のメールでのご質問にはお答えしておりませんので、一番多かったご質問にここでお答えいたします。
「クライエントは解決を求めていないのであれば、なぜkikiwellにアクセスするのですか」
 この質問が特に多く寄せられました。例をあげて説明しますと、ある人が大事にしていた物を他者に壊されたとします。この方を苦しめている核心の部分は「元の状態に戻して」です。
 もちろんそれは無理なので、賠償金を払わせるというところに落ち着きます。しかし賠償金は問題の核心ではありません。私たちは「周辺の問題」と言っていますが、どれほど甘美な「周辺の問題解決案」を持ってこられても、核心の問題は解決することはありません。クライエントはそれを知っているということです。
 これを読んでいる貴方。「私の大事な物を壊されても30億円くらい払ってもらえるなら許せるかな」なんて思っていませんか?それではこれが大事な家族でもそう言えますか?

気持ちを置いていける場所

それでは何故kikiwellにアクセスするのか。クライエントからお話を伺うと怒り、悲しみ、嗚咽、寂しさ、不満、大泣き、せつなさ…。普段言い出せない感情や行動を言ったりやったりします。それは「そのような事ができる場所」だからです。クライエントはそれらをしても傷つけられることや行動を制止されないことを知っています。感情を遠慮せずに出せるのがカウンセリングです。友人やパートナーなどに話す場合は少し遠慮したり言えない部分もありますよね。
 このように解決ではなく気持ちを置いていける場所を提供することがカウンセリングの場での第一義となります。「絶対安全地帯」とでも言いましょうか。
 カウンセラーは問題を解決してあげられない自分に無力感を感じる事がありますが、そもそも解決自体が有り得ないのです。でも、その苦しみから逃れる方法を一緒に考えることはできます。これがご質問への答えになります。

菊本裕三(きくもとゆうぞう)

(株)kikiwell代表取締役キキウェルメンタルヘルスサービス代表カウンセラー。2006年、有料の電話話し相手サービス「聞き上手倶楽部」を創造し世に送り出す。2010年、任意団体だった「聞き上手倶楽部」を(株)kikiwellとして法人化、代表取締役に。自らも代表カウンセラーとして今も現場に立つ。また、カウンセラーの教育機関として一般社団法人日本ライトカウンセリング協会を設立、現在顧問。カウンセラーの育成、セミナー活動にも尽力している。テレビ(ニュース・ワイドショー)・ラジオ・新聞・雑誌などマスコミ出演多数。著書に「相手が思わず心を開く聞く技術」(アスペクト)「だてマスク依存症~無縁社会の入口に立つ人々」(扶桑社)がある。一男一女の父親、無類の釣り好き

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