クライエントはどのような気持ちでカウンセリングを受けるのか
前回まではカウンセラー側のお話をしてきましたが、今回はクライエントに焦点を当ててみましょう。クライエントがアクセスしてくる理由はそれぞれです。夫婦間の悩みもあれば、自分の子供の心配事、会社の人間関係や不倫まで、ありとあらゆるテーマを持ってきます。そして、すべてのクライエントが持っている共通の思いがあります。それは「カウンセリングで問題は解決しない」です。意外に思う方もいると思いますが現場ではそうです。
例えば“会社での人間関係"というテーマをクライエントが持ってきました。もし貴方がカウンセラーならばどのような会話をしますか? 「会社での快適な過ごし方」でしょうかそれとも「円滑な人間関係の構築方法」でしょうか…。残念ながらクライエントはこれらを欲しがっているのではないのです。
「快適な過ごし方」や「人間関係の構築」等の情報はネットの中に嫌と言うほどあります。また、周囲の人に相談をしている人はネットで言われていることと同じ事を繰り返し聞かされているかもしれません。カウンセラーと繋がって、ネットで言われていることと同じ事を言われたらガッカリです。クライエントはそんなものは欲しくないのです。
解決でないのなら何が欲しいの?
つまりクライエントは解決策を知っていてもそれができない事を知ってほしいのです。更に言うとそんな自分を認めてほしいのです。解決策を知っていてもそれができない理由、例えば、怖いだったり、後々面倒なことになりそうだな… だったり…。クライエントがその時点で感じる気持ちに寄り添って欲しいのです。
実際の現場ではクライエントが重大なテーマを話し始めると、カウンセラーは解決策ではなく、その状況でのクライエントの気持ちを分かろうとします。そして、クライエントとカウンセラーの気持ちの距離が近づくと、クライエント自分が持っている解決策を話し始めたり、話はじめはあれほど意気消沈していたのに、テーマを笑いのネタにする場合もあり、そんなときには一緒に大笑いもします。私たちはそれを「お焚き上げ」と呼んでいます。そんなことはどうでもいいのですが、クライエントは解決策を知らないのではなく、できなくて悶々としていると理解してください。クライエントがカウンセラーに求めるのは、信じて見守ってくれる良き理解者です。