コラム タイ野菜でべジフルライフ 第60回 テンモーオーン

タイ野菜でべジフルライフ

第60回 テンモーオーン

摘果スイカ
Young Water Melon
แตงโมออ่ น(テンモーオーン)

昨年8月から、ジュニア野菜ソムリエバンコク地域校制がスタートして、10人以上が資格を取得しました。基本はDVDでの自宅学習ですが、野菜入門編は、私と一緒にDVDを見て食べ比べを体験します。野菜入門は、野菜がどう育つか、旬や品種、見分け方、栄養などを幅広く学びます。一緒に勉強しながら、毎度、日本の品種の豊富さに感心しますが、味だけでなく、流通の都合や見た目など、人間の都合で改良された品種がずいぶんあることに考えさせられます。ミニタイプやカットして売るのにふさわしい品種が開発されたり、特定の病気対策に機能成分を足したり減らしたりした野菜まであります。消費者のニーズに合わせられる日本はスゴイと思いますが、何か大事なものを失っているような気もしてしまいます。
タイは、一つ一つの野菜の品種は少ないですが、そもそも野菜の種類が多いので、そこまでこだわらずにすんでいるのかもしれません。伝統野菜や「売り物になるの?」と思われる野菜が自由に雑多に並べられている様にはいつもワクワクします。先日、片手で持てるミニスイカが売られていて、タイでも小玉スイカが出回るようになったのかと買ってみたら、なんのことはない、赤くなり始めたばかりの、思いっきり成長途中のスイカでした。食べられるといいますが、この大雑把さにはビックリです。でも、もっと未熟な段階の赤ちゃんスイカは、よく売られています。日本では、捨てられるようなところが出回っているというのが、タイらしくていいなあといつも思います。今回はその未熟なスイカについて解説してみましょう。
スイカ自体は、熱帯アフリカ原産で、日本には中国の西の方から伝わった瓜ということで、西瓜という名前がつきました。スイカの栽培過程で、より美味しい実を作るために、栄養がしっかりいきわたるよう余分な実を取り除きます。その取り除くことを摘果と呼びます。タイ語のテンモーはスイカ、オーンとは柔らかいという意味です。年中栽培されていますが、特に暑季になるとこのかわいらしい赤ちゃんスイカをよくみかけます。縞があるものとないものがあります。日本では、農家が漬物にする他は、もっぱら捨てられてしまっているかわいそうな赤ちゃんたちです。高く売れるものでもないので、流通させるコストを考えると、捨てる方が早いのです。タイで出回っているのは、おいしくたっぷり食べられる料理があるという面が大きいと思います。タイ料理には、ウリ類をおいしく食べられるスープがたくさんあります。ゲーンソム、ゲーンリアン、ゲーンチューなど、少し青臭いと思うものでも、スープの中に入ると味がしっかりしみて美味しく変身、テンモーオーンもこれらのスープにピッタリです。また、ナムプリックにつけて食べられることもあります。皮も軟らかいので、そのまま利用できますが、気になるようでしたら剥いた方がいいでしょう。
熟す前ですので果糖はほとんどなく低カロリー、ビタミンBやCを含み、利尿作用、美白効果があるとされています。スイカの他にカボチャやマスクメロンの幼果も出回っています。日本ではなかなか出会えないものたちですから、市場をちょっとのぞいてトライしてみませんか?

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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