コラム タイ野菜でべジフルライフ 第38回 ハイゴショウ(チャプルー)

タイ野菜でべジフルライフ

第38回 ハイゴショウ(チャプルー)

ハイゴショウ

ชะพล(チャプルー)

今年のソンクラーンは、秋田の実家で温泉と雪遊びを楽しんできました。実家近くの八幡平や八甲田では、春に道路を除雪することで雪の回廊ができます。今年は雪が多く回廊も高く立派で、5月中旬まで楽しめるそうです。私が雪遊びをしている時に、東京では桜がすでに散り始め、タイでは水かけ祭りが行われていたことになります。のんびりとタイで生活して、たまに日本に帰るだけでも、気候や習慣の違い、行事などに触れることで地球の広さを実感できます。

 

それは、食べ物でも感じられますね。タイには実に様々な料理法や食べ方がありますが、「ミアンカム(เม ี ่ยงค ํา)」もユニークだと常々思っております。タイレストランで洒落た前菜として置いてあるところもあり、日本からのお客様が喜ぶのでよく注文します。もともとは、タイ北部で「ミアン」という発酵茶葉を噛む習慣があり、ニンニクなどを巻いて食べていたのが、「ミアンカム」などになって広がりました。主にチャプルーという葉を利用しますが、カナ(カイラン)を利用したり、「ミアンプラートゥー」「ミアンラオ」「ミアンクイティアオ」などいろんなミアンがあります。また、よく似た嗜好品に「キンマーク」というビンロウジの実と石灰を包んで食べるものがあります。タイでは滅多に見られなくなりましたが、ミャンマーではまだビンロウジで口を真赤にした人を見かけることがあります。こちらは「プルー」という葉を使うのですが、決しておいしい葉ではなく、これまた深い歴史があるそうです。何にしても「所変われば…」で、木の葉1枚にも違いがあって面白いですね。

 

東南アジア原産のコショウ科の植物で、シソの葉くらいの大きさからその倍くらいのものまであり、艶があり緑が濃くハートの形をしています。いかにも木の葉というしっかりした厚みがありますが、雨季には柔らかくなります。古くから薬用ハーブとしても利用されてきました。特に痰を溶かし、咳を抑え、消化器系のガンを防止する働きがあるそうですが、食べ過ぎは腎疾患や結石になるとも言われていますので注意が必要です。

 

代表的な料理「ミアンカム」は、トウガラシ、マナオ、ピーナッツ、赤タマネギ、炒りココナツ、干しエビ、ショウガなどと一緒にスナックや前菜として食べます。葉を三角に畳むようにして器を作ったり棒状に包んだりして、甘いタレで食べます。これらの具はおいしさだけではなく、栄養バランスの面からもとても理に適っているのです。ミアンにして食べると、他の具が強烈過ぎるのでなかなか気がつきませんが、和名にもあるようにコショウのような辛味と爽やかさがあります。葉だけでなく、茎の柔らかい部分や花にも辛味があります。サラダやスープなどに香辛料のように利用するといいアクセントになり、南部の名物料理「カオヤム」というサラダご飯にも使われていますね。

 

スーパーで葉だけが売られていることはあまりありませんが、葉と具がセットになったミアンカムセットを見かけることがあります。自宅でお洒落に皿に広げて、ティータイムやお酒のお供にしたら会話もはずみそうですね。市場などで葉を入手できたら、天ぷらにするのもおすすめです。

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

関連記事...

バックナンバー情報..