コラム タイ野菜でべジフルライフ 第28回 夜来香(カジョン)

タイ野菜でべジフルライフ

第28回 夜来香(カジョン)

夜来香 (イエライシャン)
Cowslip Creeper
ขจร (カジョン)

♪あわれ春風に 嘆くうぐいすよ 月に切なくも 匂う夜来香 この香りよ♪ これは、私がOL時代にカラオケでよく歌った李香蘭(山口淑子)の「夜来香(イエライシャン)」というヒット曲です(作詞作曲:黎錦光訳詞:佐伯孝夫)。戦時中の歌ですが、「李香蘭」がドラマやミュージカルになったり、テレサ・テンがリバイバルヒットさせたのでご存じの方も多いでしょう。名前の通り、夜が来ると香りが強くなる花だそうですが、残念ながら日本では、植物園などでしか見られないようです。植物園の花もタイから持ち込まれたのだとか。そうなんです、タイには、たくさん咲いているのです。そしてごく一般に食べられているのです。花だけでなく、若葉や若い茎も食べられるそうです。どんな花なのかと勝手に想像して歌っていたのですが、まさか食べることになるなんて!この花を買う度に、この歌が頭の中をぐるぐるしてしまいます。

 

タイ人は、野菜や果物だけでなく、木の葉や茎、花なども上手に食べていて感心させられます。食用の花もいろんな種類がふつうにスーパーで売られています。日本でよく食べられている花というと菊を思い出しますが、これは私が東北出身だからで、西の方ではあまり食べないとも聞きました。また、華やかなエディブルフラワーもありますが、飾り的な要素が強く、タイのようにモリモリ食べるという感じではありませんね。ぜひ、タイの食べる花に挑戦してみてください。初めての方は、苦味が少なく扱いやすいドーク・カジョンと呼ばれる夜来香がおすすめです。

 

歌は中国の歌ですが、花は、インドやインドシナ半島原産とします。花を食べるといっても、正確には、淡い黄緑色の小指の先ほどのつぼみの状態をいただきます。開花すると、花弁が5枚のかわいらしい形になります。かわいいだけではなく、しっかりと栄養もあります。ビタミンAやC、カルシウムが豊富で、野菜として日常的に食べるのも理にかなっているのです。 買ってきたら、つぼみの部分を手でちぎってバラバラにしてから使います。タイ人は、生でナムプリックにして食べることもあるそうですが、さっと加熱した方が食べやすいです。オムレツやスープの具にするとお子さんも喜んで食べるでしょう。食感を楽しむには、さっと茹でる程度でいいですが、先日、ヒョウタンのスープにカジョンを加えてくたくたになるくらいに煮込んだら、薄味でも十分に楽しめるほどうま味が出ました。また、和えものやサラダにしてもおしゃれです。炒めものに加えると、いつもの料理が華やかになります。入門編としては、ひき肉炒めが簡単でしょう。

 

味つけは、タイ風にこだわる必要はありません。スーパーでふつうに売られていますが、レストランでは時々しかみかけません。花の料理があるレストランは、こだわりの店という感じで、他の料理もおいしい気がします。タイ料理店に行ったら、花のメニューを探してみてはいかがですか?

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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