世界金融危機とは、2008年9月の米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営が破綻したことによる世界的な金融の混乱、と読者の皆さんは記憶されていらっしゃるかもしれません。リーマンショックとも言われますのでなおさらです。しかし、実際にはリーマン・ブラザーズの破綻はある日突然起こったわけではありません。サブプライムローンという信用力の低いローン債券が焦げ付き、投資家や金融機関の融資姿勢が厳しくなり、お金が回らなくなるどころか資金引き揚げまで起こって、経営状態の悪化した金融機関が市場から退場させられるに至るという事象のひとつがリーマンショックです。
リーマンショック1年前の2007年8月、パリバショックと呼ばれる事象が発生しました。BNPパリバは仏最大手の銀行で、BNPパリバ傘下のファンドは投資家から資金を集め、サブプライムローンの証券化商品に投資していました。しかしサブプライムローンには焦げ付きが目立つようになり、パリバは投資家からの解約受付を凍結すると発表しました。巨大な規模のBNPパリバ・ファンドが解約凍結をしたことにより、サブプライムローン関連の証券化商品には買い手がいなくなり、多くの投資家が投資商品の現金化を急ぐという事態が発生しました。そして解約に対応しようにも、あまりにも規模が大きくなりすぎて現金化が困難となり金融不安の様相を呈しました。
パリバショックはその後沈静化したものの、2008年3月になると、米投資銀行のベアー・スターンズがサブプライムローンを担保に行っていたレバレッジ取引融資を継続できなくなり、経営破綻しました。これによりサブプライムローン問題が再び表面化します。同社はJPモルガンが合併してなんとか救済しましたが、信用問題はくすぶり続け、やがてリーマン・ブラザーズに飛び火して破綻に至りました。リーマン・ブラザーズは世界の大手投資銀行の一角を占め、多くの投資家や金融機関を顧客にしていたので世界中が混乱に陥りました。負債総額は約6,100億ドル(約80兆円)に達し、米国史上最大の企業倒産となりました。
今年3月に起こった金融不安も、保有債券ポートフォリオの損失を懸念した預金者からの取り付けにより破綻した米地銀だけの問題ではとどまらない、という疑心暗鬼がくすぶり続けています。今回の危機は沈静化したものの、他にも同様の問題はないのか、リーマンショックの記憶もあり、しばらくは金融機関の経営への信用問題として後を引きそうです。