12月4日、フランス国民議会(下院、577議席)は、バルニエ首相率いる内閣の不信任決議案を賛成多数で可決した。フランスで内閣不信任案が可決されたのは1962年以来、62年ぶりのことである。バルニエ内閣は発足からわずか3カ月で崩壊した。
今年7月の国民議会選挙で、左派連合「新人民戦線(NFP)」が最大勢力に躍進する一方、マクロン大統領率いる中道の与党連合は第2勢力に転落した。単独過半数を獲得した政党はなく、政権運営は困難を極めている。第3勢力となった極右「国民連合」(RN)は、今回、NFPと共にバルニエ内閣による600億ユーロの歳出削減を含む2025年度予算案に反対し、不信任案に賛成した。マクロン大統領が指名した首相がことごとく、退陣に追い込まれており、また、1年に1回しか下院総選挙ができないフランスでは、次回の総選挙は早くても来年7月以降と、マクロン大統領の求心力は削がれ続けている。
そして、ドイツ連邦議会(下院)では12月16日、ショルツ首相が要請した信任投票を行い、反対多数で否決された。これを受けショルツ首相は、フランクワルター・シュタインマイヤー大統領に議会の解散を提案、連邦議会選挙が来年2月23日に前倒し実施される見通しとなった。2021年に発足したショルツ氏率いる中道左派・社会民主党(SPD)と緑の党、中道リベラル・自由民主党(FDP)の3党による連立政権は、今年11月にFDPが離脱し、政権は事実上、崩壊していた。
戦後のドイツ政治は長らくSPDと保守会派であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が二大政党として担っていた。しかし、FDPや緑の党が台頭し、最近では極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の伸長によって、政治勢力は分裂、流動化している。移民政策やウクライナ支援、財政規律や社会保障政策を巡って、主張は様々で、政党間の協力も困難になっている。
トランプ第2次政権の誕生が確定し、対米政策では厳しい状況に陥ることが予想される中、EU政治の2大国である独仏政権が不安定化したことで、欧州政治のかじ取りは困難が予想される。経済的にも、このところユーロ圏経済の不調が深刻化しつつあることが明らかになってきたおり、2025年の金融市場にとっては、またひとつ不透明な要因が増えることを意味する。ユーロや欧州株にとっては弱気の材料として視野に入れておくべきだろう。