コラム お金の知識を高めるコラム Vol.100 AI時代到来とデータセキュリティ

お金の知識を高めるコラム

Vol.100 AI時代到来とデータセキュリティ

アサヒビールの親会社、アサヒグループホールディングスは、9月29日付·10月3日付10月8日付で、ランサムウエアによるサイバー攻撃を受け、システム障害が発生し、個人情報が流出した可能性のあることを発表しました。

その影響は、同社内のデータ処理はもちろん、同社製品の出荷に重大な支障が出たほか、他社への発注急増が発生したことで、一般市民の日常生活にも及びました。歳暮商戦向けのビールギフト販売を取りやめる百貨店が出たり、プロ野球のポストシーズンの「ビールかけ」が見送られるという意外なところにも影響が出ました。

その後、同様にサイバー攻撃を受けた企業が被害を公表する例があとを絶たず、ヘルスケア、金融、テクノロジーなど幅広い業種で被害が広がっていることも明らかとなりました。

ITシステムは、現代では水道や電気と同じで、安全な日常生活に必須の社会インフラです。そのITシステムへのサイバー攻撃は、無視できない重大な影響を与えます。米国では、石油関連企業がサイバー攻撃を受けたことに端を発し、消費者から軍隊まで広範囲にガソリン供給が滞って、国家を揺るがす緊急事態に陥るような事例もありました。また、米名門私立大学「アイビーリーグ」を狙ったサイバー攻撃も相次いでいます。今年に入って、ハーバード大学やコロンビア大学が、データ侵害された可能性を明らかにした上で、調査していることを報告しました。こうした個人の機密情報は、盗取や悪用のため、狙われているといわれます。

企業も大学も政府も、ウイルス対策ソフトの導入などセキュリティ対策を徹底し、役職員が一丸となって被害を減らす努力はしていますが、サイバー攻撃は手口がどんどん巧妙になっており、いたちごっこになっている点は否定できません。

しかも、クラウドサービスの普及やAI(人工知能)の普及・高度化によって、データセンターへの依存度は高まっており、万が一、データセンター事業者への攻撃が成功すると、より影響は大きくなります。

今後は、セキュリティ対策ももちろんですが、集中型のデータ保管やサーバー管理のあり方も変わるでしょう。AI時代の到来とともに、世界は一気に変化していく可能性を予感させます。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

関連記事...

バックナンバー情報..