カルティエが昨年夏に新しいコレクション「カクテュス (CACTUS)」を世に出しました。可憐なフローラ (花) をモチーフとしてきた従来のものから乖離した、大胆で力強い発想のコレクションです。カクテュスはサボテン。刺激に満ちた遊び心で、大胆な個性と自由なマインドを表現しております。細部に宿る神は繊細に誂えられた職人技の金の棘に見てとれます。
フェミニンといえばフローラ。昔から女性は花にたとえられてきました。花は観られて愛でられるもの。手折られて飾られ、人が振り向いてくれるのを待つ。まさに受け身一方で、かよわくて庇護されるべき存在でした。そうした常識や常套表現を、女性もまた受け入れてきたのです。
棘ある花といえば薔薇。「美しきものにはトゲがある」の英語表現は "Roses have thorns" です。意味は「どんなに完璧に見えるものにも欠点がある」と聞きますが、ちょっとガッカリですね。古今東西から美人の代名詞。香しい薔薇は花の女王として君臨してきたではありませんか。そうであった理由は、トゲあればこその魅力。なければ、そこらのかわいそうな野菊の墓になってしまいます。
棘の音感は条件反射的として身体的な痛みを喚起します。「私は苦悩する表情が好きだ。痛みに嘘はつけない、真実は美しいがゆえに救いたい」との言葉を遺したのは、静かなる情熱と称えられた19世紀アメリカの詩人エミリ・ディキンスン。
女性が愛でられ可愛がられるだけの存在に閉じ込められていれば、悲しみはあっても痛みはないかもしれません。だけどそれで本物の愛は伝えられるのでしょうか? 棘は相手を傷めますが、自らを傷めることなく相手を傷つけることはできません。傷つき、傷つけられることを恐れては、真実の愛を語ることはできません。なんと、センシュアルで甘美な事実なのでしょう。苦悩は真実であるから救いたい、だから愛の真実は傷つけることを厭わないのです。
女性の皆さん、あなたの強さを隠すことはありません。弱さの美しさが退廃のそれならば、強さは強靭な美しさなのですから。時代のレボリューションをサボテンジュエリーのアートから感じる。これぞ SENSE OF FREEDOM! FREE YOUR SPIRIT!