FIFA 2022 Qatar WorId Cupはメッシたちのアルルゼンチンが優勝し、エムバペのハットトリックも虚しくフランスは準優勝、3位クロアチア、4位モロッコの結果となりました。クロアチアに敗れた日本の順位は9位。ドイツとスペインを撃破してグループ1位での決勝トーナメント進出と、その1回戦が惜しくもPK負けだったからだとか。決勝戦中継の日本人アナが、「クロアチア戦に勝っていれば、このピッチに日本のイレブンがいてもおかしくなかった」と口走っていましたが、それは胡蝶の夢だと思いました。
さて、日本はドイツとスペインという優勝経験国に勝ちました。外国メディアがビックリして目を瞠って賞賛。こうなると国を挙げての有頂天。「ドイツもコイツも、日本を弱いと見くびって手を抜いたのだろう、なぁんだ」です。しかし、相手側サポーターのコメントは「甘く見たのかもしれない、だが結果を見れば日本が上回っていた。わが方が弱かったのだ」と語るのです。
日本人も敗北の後「あのときこうすればよかった、気を抜いていたのだ。悔しい、次回こそは! 」と反省します。反省もいい、だが先に自らを打ち負かせた勝者を称えるべきではないでしょうか? スポーツは命のやり取りをする戦闘ではありません。自らを錬磨しスキルをアップさせ、速く高く強く美しくなる芸術です。そして自らをそこに持ち上げてくれる最高の味方は、己より実力ある相手にぶつかり、その芸術のエッセンスをわがものにする試合の場です。だからこそ、スポーツの神髄とは勝者へのリスペクトにあるのです。
敗者は、次は勝とうと思うでしょう。けれど勝つためだったら何をやってもいいわけではありません。日本の伝統的スポーツは武術由来のものが多いせいか、殊にチームスポーツにおいて競技者に自己犠牲を要求し、そうすることを美徳と称えます。それでは個性を表現する芸術とは真逆です。たとえ勝ったとしても、世界から賞賛される“頂"には、永久に到達できないのではないでしょうか。