積極的な財政出動
10月4日、自由民主党の総裁に高市早苗氏が選出されました。高市氏は経済成長を重視し、財政規律を重んじるより、公共投資や補助金など積極的に財政政策を打って、経済成長を重視すべきだと主張してきました。デフレからの脱却にも前向きです。政策的には、いわゆる「アベノミクス」を踏襲するスタンスで、石破政権の方向性とは一線を画すとも言えるでしょう。そのため、総裁選出後、金融市場は大きく反応し、特に株価は急上昇しました。いわゆる「高市トレード」という現象です。一方で、日本銀行が利上げを実施するとの予想は後退しながらも、10年日本国債利回りがジワリと上昇するということも起こりました。財政規律を損ねるとの懸念が強まったからです。為替相場では、ドル円で金利差拡大観測から円安が進みました。金利差は、ほとんど変わらなかったにもかかわらず、円安に大きく振れたのです。日本の政治が安定しているというイメージは、変わりました。日本円に対する受け止め方も、既に変化しています。悪い「円安」は日本にとって非常によくないシナリオです。
また、「年収の壁」の引き上げなど国民民主党が求める減税策も公約として掲げ、この政策実現を通じて同党の協力を得たい考えです。これが実現すると高市新政権は財政拡張的な政策を採ることとなり、日本国債の売り(金利は上昇)材料になるとの見方が強まりました。株価にとっては、経済安全保障をメインテーマとした産業育成成長追及の流れが加速するとの期待が強まり、プラスに働きました。
自公連立の解消
高市氏は当初、自公に加え一部野党も含めた枠組みで首相指名選挙に臨む構想を描いていましたが、10日には公明党が連立を解消することを決めました。そうすると、市場は「高市トレード」の解消に動き、株価は下げ、為替は円高に触れました。
自民単独政権のシナリオ
もし自公連立が崩壊しても、首相指名選挙で自民党勢力が優位であれば高市氏が首相になる見通しです。ただし、少数単独与党での国会運営は、法案ごとに成立までの合意形成は難しくなります。支持率次第では自民党内での求心力低下も想定されます。野党が内閣不信任案を提出すれば、可決に至る可能性もあり、その際は高市氏が衆院解散や内閣総辞職に追い込まれる局面もあり得ます。
野党結集のシナリオも
どの政党にも、連立を組むチャンスがあるということは、可能性が少ないとはいえ、野党勢力が結集して、政権交代が起こる可能性もあります。その場合も、国民生活を守るという観点から、財政出動は行われるでしょう。実は、その場合も、「高市トレード」に似た動きが起こりえます。その時、「円安』は案外、進行が早い可能性もあります。読者の皆さんには、是非、気を付けておいて欲しいと思っています。