コラム お金の知識を高めるコラム Vol.9 自分の加入している年金を理解していますか? (その3) 企業年金の現行制度

お金の知識を高めるコラム

Vol.9 自分の加入している年金を理解していますか? (その3) 企業年金の現行制度

 2月号で「企業年金」のうち、厚生年金基金について解説しましたが、運用難によって、一部には、必要な年金の原資が準備できないなど、制度存続の危機に瀕し、現在では企業年金制度は改正されています。本稿では、その点を解説します。

 平成13年に税制適格退職年金は廃止され、厚生年金基金の他に、以下に記載する制度を選択的に採用できるよう新しい制度として改訂されました。

確定給付企業年金・規約型

 規約型は、税制適格退職年金と同じように、会社と社員との間のルールを決めた退職金規程や規約に基づき、会社が保険会社や信託銀行等と契約を結び制度を運営します。そして、契約した保険会社や信託銀行等は、会社に代わって、給付に必要な保険料(掛け金)を集め、集まった資金を運用し、給付するしくみになっています。また、給付に必要なお金の準備ができているかを、毎年確認するしくみがあります。

確定給付企業年金・基金型

 基金型は、「企業年金基金」という別法人が制度を運営します。参加する企業はその基金に運営を任せ、掛け金を支払い、給付を依頼します。現在、企業年金基金数は600を超え、厚生年金基金から移行する基金以外にも、厚生年金基金が企業年金基金も作り、従来の厚生年金基金に加え確定給付企業年金のしくみも持つ基金も出てきています。

確定拠出年金(401k)

 確定拠出年金は確定給付企業年金と同様に法律で最低限守らなければならない条件の範囲内で、会社ごとに拠出・給付のルールが定められます。確定拠出年金では、会社が掛け金を社員に支払った時点で、そのお金は基本的に社員のものになります。他の企業年金とは違い、従業員が受け取る給付額は、自分で運用している自己名義の口座にあるお金なのです。

中小企業退職金共済

 単独で退職金制度を運営することが難しい中小企業のために、国の中小企業対策の一環として設けられた中小企業のための退職金の共済制度です。335万人が加入しています。(2017年3月末時点)以上の通り、制度は変わりましたが、長く続く低金利の環境下で、基金の増額が望み薄な状態は続いています。確定拠出年金や確定給付型年金の創設は、前進といえますが、運用環境が厳しい中では、年金制度の将来は、非常に厳しいと言えます。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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