コラム Dr.MANAのセンシュアルエイジング Vol.68 パリジェンヌと日本女性―フェムケアの文化的違い(後編)

Dr.MANAのセンシュアルエイジング

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前編でお話した通り、フェムテックの世界では吸水パンツや月経カップ、布ナプキン、大人のおもちゃ、膣トレなどが注目を集めています。これらを否定するわけではありませんが、これらは女性の健康問題の根本解決につながるとは私は考えていません。

一方で、我が国日本では、生理痛やニキビの軽減のためのピルの使用率、無痛分娩の実施率、更年期障害のホルモン補充療法(HRT)の使用率、子宮頸がんを予防するHPVワクチンの接種率などが、他の先進国と比べても最低水準にあります。ここが私のいうところのフランスマダムたちとの根源的違いです。

確かに、自然なライフスタイルに基づくアプローチは魅力的です。私自身も、質の良い睡眠を基軸に、栄養や運動療法をはじめとした自然治癒力を促すアプローチ、さらにはCBDを用いた生理痛緩和など、診療に取り入れています。しかしながら、近代医学の成果を活用して効率的に健康を維持し、改善することも重要であると考えます。多様な選択肢を認め、それぞれの利点を活かすことが、現代社会における健康管理の成熟を示すものだと思います。

フェムケアの文化において、日本とフランスの違いは、出発点そのものから異なっていることが理解いただけたでしょうか。近代医学の恩恵を、そのリスクとベネフィットを冷静に比較し、バランス良く利用すれば、健康の向上を確実に期待できます。例えば、ホルモン補充療法は、遺伝子に作用して生物学的な時計(エピジェネティック時計)を遅らせる効果があります。これにより骨密度や心臓血管機能の保護、認知症の予防につながり、さらには抗老化効果も期待できます。

これからは人生100年時代と言われています。その中で私たちが対処すべき健康課題はますます増えていくでしょう。そのためにも、近代医学の進歩と自然治癒力を活かしたライフスタイルの両側面から、柔軟に考えていくことが求められます。それぞれのメリットを最大限に活用し、健康で充実した人生を送りましょう

Dr. MANA(岩本 麻奈)

一般社団法人・日本コスメティック協会名誉理事長/ナチュラルハーモニークリニック顧問医師/エッセイスト/コスメプロデューサー/美容ジャーナリスト 
皮膚科専門医。20年に渡るフランス滞在ののち、東洋のパリ“プノンペン”に転居。女性を元気に美しくする講演活動を続けている。「パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ」「生涯男性現役」(ディスカヴァー トゥエンティワン)「フランスの教育・子育てから学ぶ 、人生に消しゴムを使わない生き方」(日本経済新聞出版社)など、美容やライフスタイルに関する著作多数。近著は「結婚という呪いから逃げられる生き方」(ワニブックス)

公式HP: dr-mana.com   公式ブログ: ameblo.jp/dr-mana

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