コラム お金の知識を高めるコラム Vol.71 インフレ率と金利

お金の知識を高めるコラム

Vol.71 インフレ率と金利

世界は、インフレ圧力にさらされているとよく耳にします。実際、読者のみなさんが、日々の暮らしの中で、物価が上がっていることを実感される場面は増えているのではないでしょうか?

ところが、タイ商務省が6月6日に発表した5月の消費者物価指数は前年比0.53%上昇にとどまりました。4月の伸び率は2.67%だったので、物価の上昇幅が縮小したことがわかります。21カ月ぶり低い伸びでした。コアCPIも前年比1.55%上昇と4月の同1.66%上昇を伸び率では下回りました。インフレが鈍化した要因は、エネルギーや食品価格の下落と前年に大幅上昇した反動で比較ベースでは伸び幅が小さくなるからです。6月CPIも同様に、低下すると予想されています。総合インフレ率は、今年第2四半期に前年同期比1%ちょっとの水準に、年後半はそれよりも低くなると予想されています。

実は、タイの政策金利はまださほど高くありません。タイ中央銀行は5月末に、政策金利を0.25%引き上げました。6会合連続での金利引き上げです。それでも、政策金利はようやく2%にのせたところです。タイ中銀は、パンデミック禍で、大幅な利下げを実施しました。その後の利上げにもかかわらず、金利は低水準にとどまっています。そのため、金利の絶対水準は低く、タイ中央銀行高官は、政策金利はまだ「中立水準」にないとの見方を示しています。つまり、国内経済の回復は続いていて、更に景気が拡大する可能性があるため、金利をより高い水準に引き上げなければならないとの見方をしていることがわかります。

しかし、タイ中銀の目標インフレ率が1─3%であるのに対して、総合インフレ率が、目標レンジを下回ってきたことで、追加利上げに踏み切るのはかなり難しい状況になりました。タイ中銀の次回の政策会合は8月2日に予定されています。利上げ見送りなのか、利上げを実施するのか、みなさんも注目してみてください。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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