タイ野菜でべジフルライフ

第66回 ナツメ

ナツメ
Jujube
พุทรา (プッサー)

先月号で、タイでは毎年旧暦9月1日から9日間、ギンジェーと呼ばれる斎食期間があるという話を書きました。今年は、西暦でいうと9月24日から10月2日までとも書いたのですが、ナント、今年に限っては旧暦の9月が2回あるのだそうで、10月24日からもギンジェーがあるというのです。タイに長くおりましたが、そんなことがあるなんて全く知りませんでした。

 

調べてみると旧暦(太陰太陽暦)というのは、月の満ち欠けで1ヶ月が決まっていて、1年が354日になります。そのままだと季節とのずれが大きくなって、夏に元旦がきたりしてしまうので、約3年に1度、1ヶ月を閏月(うるうづき)として加えるのだそうです。閏年の2月29日のように固定されているものではなく、季節に合わせて月ごと挿入してしまうので、その年は、13ヶ月になります。日本でも旧暦が使用されていた明治5年までは、そうした月があったのだそうです。

 

ただ、9月が閏月になるのは稀で、前回が1832年、次回が2109年ですので、今、生きている人が年に2回のギンジェーを経験できるのはもうないということになります。そんな貴重な年のギンジェーですので意識して過ごしてみたいところです。実際に2回ギンジェーを実行するタイ人がどれくらいいるのか、その辺も興味深く眺めてみたいです。

 

暦というのは、他にもいろいろありますが、食と季節、文化は深くつながっていて、いろんな知恵によって今の私たちの生活があるのだなあとつくづくと思います。さて今月は、季節の変わり目を告げる果物、ナツメについて紹介します。

 

中国南部、インド、熱帯アジア原産の果物です。漢方の乾燥した実ばかりでなく、果物として生で食べられます。生は、表面がツルツルして青リンゴのようです。屋台で見かけて青リンゴだと思っている方がきっといるに違いありません。世界には何百もの品種があるそうですが、大きくわけて鶏卵大のインドナツメ(写真)とうずらの卵大の中国ナツメがあります。ナツメヤシと呼ばれるのは、デーツのことですので、このナツメとは別物です。

 

常温で保存できますが、すぐに茶色くなります。腐ったわけではなく、それが熟した状態ということで甘味がぐっと増します。ただ、ほどよい酸味とシャキシャキとした食感が心地よい青い方が好まれているようです。皮ごとガブリと食べられますが、真ん中に大きな種がありますので取り除いてください。

 

効用は多く、内臓が丈夫になる、消化を助ける、免疫力を高める、精神を安定させるなどといわれています。鉄分やビタミンCも豊富で、中国では、「1日3粒のナツメを食べると年をとらない」「女性の元気は3粒のナツメから」という諺があるそうで、美容によいとされてきました。この場合の1粒は小さい品種ですので、大きなものは1個で十分ということになります。生で食べるほか、ジュースやジャム、シャーベットなどにできます。また、シロップやワインで煮込んでコンポートにすると、リンゴよりやさしい味に仕上がります。

 

雨季の終わりから乾季の初めに出回りますので、生のナツメをたくさん食べられるぜいたくを味わって、旬の間にしっかり楽しんでください。

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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