コラム タイ野菜でべジフルライフ 第48回 ディル(パクチーラオ)

タイ野菜でべジフルライフ

第48回 ディル(パクチーラオ)

ディル/イノンド(伊乃牟止)
Dill
ผักชีลาว(パクチーラオ)

私は、あまりエアコンを使いませんが、だんだんと扇風機をまわす頻度が多くなってきました。暑季にむけて最低気温があがり始めていると実感、日中の日差しも痛くなってきました。ところが、いっきに暑くなるのかと覚悟を決めていると、涼しい日もあって、周りをみると風邪やらインフルエンザに罹患している人も多いようです。あまり気温の高低差がないように見えるタイでも人の体はしっかり反応しているのですね。乾燥も原因かもしれません。これから三寒四温ならぬ三涼四暑で季節がかわっていくのでしょう。

 

来たるべき猛暑の時期を元気に乗り越 えるために、ここはやはり長年のタイ人の食の知恵に学びたいところです。まずは、これから旬を迎えるいろいろな種類の果物をしっかり食べましょう。ビタミン補給にも水分補給にも効果的です。そしてもう一つが香辛料です。タイ料理は、野菜が少ないと感じている人も多いでしょう。でもよくみると、直接野菜をモリモリ食べなくても、体にいい香辛料が豊富に入っていることがわかります。トムヤムクンスープなどは、海老とキノコの他は食べられない香辛料ばかりで、健康効果といわれてもピンとこないかもしれません。でもタイ人のガンの罹患率が日本や他の国に比べても低いのは、直接口にいれないその香辛料にヒミツがあるといわれています。香辛料には、薬効だけでなく、風味が食欲を増進させる 効果もありますので、暑くて食欲が減退する時にはピッタリなのです。

 

今回は、比較的手に入りやすく扱いやすいパクチーラオをとりあげてみます。

 

地中海沿岸原産のセリ科のハーブで、一般に日本でもディルと呼ばれていますが、スペイン語由来のイノンドという和名もあります。パクチーラオの「ラオ」とは、ラオスやタイの東北地方のことで、彼らが好んで食べることから名づけられたといわれます。ディルという名は、「鎮める」という古代語に由来していて、古代エジプトの時代から薬用に利用されてきました。神経を落ち着かせる鎮静作用、安眠効果があり、夜泣きの赤ちゃんに煎じられたりもしたそうです。また、消化不良を改善し、腸内で発生するガスを抑えるという効果もあります。

 

西洋では、葉や種を乾燥させて使うことが多いようですが、タイでは、生の葉を好んで使います。イサーン料理では、ハーブというより野菜としてたっぷり食べるゲーンオムというスープが有名ですし、生でナムプリックをつけて食べたりもします。ホーモックという魚の蒸し料理にも入っていますが、西洋でも「魚のハーブ」と呼ばれるほど魚料理によく合います。手軽に利用するには、蒸し料理に入れたり、ドレッシングやマヨネーズに刻んで加えたり、ポテトや卵などのサラダにいれるだけで、ちょっとおしゃれに変身です。

 

保存は濡らしたキッチンペーパーで根元を包んでタッパーなどで密閉して冷蔵します。冷凍する場合は、葉だけをつまんでそのままか、みじん切りにするといいでしょう。ビネガーに漬けてハーブビネガーとして楽しむこともできます。

 

もはやすっかりローカル野菜として定着したディルですが、苦手意識をもっていた方も多いのではないでしょうか? ぜひ、毎日の食卓に変化をつけるためにも試してみてください!

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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