タイ野菜でべジフルライフ

第62回 キクイモ

キクイモ(菊芋)
Jerusalem artichoke (エルサレムアーティチョーク)
แก่นตะวัน (ゲーンタワン)

スーパーマーケットは、タラートと同じように旬を感じることもできますが、それとは別にその時のトレンドが見えたりもして、時々じっくり観察してみると面白いものです。タイ人の健康意識が高まり始めた時にまず注目されたのがキノコで、いっきにスーパーでの品ぞろえが増えたことがありました。最近は、トマトに力を入れているところがあったり、タラート顔負けなほどローカル野菜をそろえているところもあり、いくつかのスーパーを比較してみるのも楽しいです。何が流行っているのか、何に力を入れているのか、どういう商品に強いのかが見えてきます。タイのスーパーでは、日本ではなかなか手に入らないような貴重な輸入食材が何気なく売っていて驚くこともあります。外国人が多いからでしょうが、雑穀や豆の品ぞろえは、売り場でついはしゃいでしまうほど。知らない商品を見かけた時に素通りするのではなく、「これは何?」と向き合ってみると意外な発見があって楽しいですよ。発見といえば、1年ほど前にBangkok Farmer’s Marketで生姜に似た塊茎、Jerusalem artichokeが売られていました。究極の健康食材的な呼び込みでしたが、正体がわからず多くの人が怪しげに眺めておりました。買って帰ってからそれがキクイモだと判明。日本でも各地で栽培されているのですが、その時の私にはわかりませんでした。その後、オートーコーなどで目にするようになり、いつの間にかスーパーにも置かれ、いよいよ定着してきたかなという感じがしています。この機会にタイにとっての新顔野菜ということでキクイモを紹介してみたいと思います。

北米原産のキク科ヒマワリ属の植物で、ネイティブアメリカンの大事な食料源でした。エルサレムという名は、誤解からきたようで関係ないそうです。学名は、ギリシャ語で「塊茎を作る太陽の花」という意味で、花はヒマワリ、味はアーティチョーク、塊茎は生姜に似ています。皮が薄いので皮ごと利用できますが、気になるようなら剥いてください。オリゴ糖が含まれているため甘味を感じますが、かすかな土臭さを感じることもあります。生のままサラダや和え物、漬物にしたり、加熱して炒めたり、煮物にしたりなど、ジャガイモやレンコンのレシピを応用するといいでしょう。丸みがあって太ったもの、実がかたくしまったものを選びます。洗わずに冷蔵庫で保存してください。「天然のインスリン」と言われるほど、血糖値をコントロールする力があり、糖尿病の予防と改善に大きな効果をあげています。薬用に利用されるほどで、国によっては、積極的にキクイモの栽培を励行しているところもあるそうです。特徴的なのがイヌリンという成分で、腸内で善玉菌を増やし、悪玉菌を減らし腸をきれいにしてくれます。血流がよくなり、脂肪の吸収を防ぎ、美肌の効果もあるとか。キクイモは、外来種として他の植物を駆逐する勢いで増殖し、日本でもその点が問題になってはいるのですが、それだけ生命力があるということで、肥料や農薬を使う必要のない安心食材でもあります。芋といってもタマネギと同じくらいの低カロリー、それでいて満腹感が長持ちするので、ダイエットにも最適です。

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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