コラム タイ野菜でべジフルライフ 第55回 ザクロ(タップティム)
第55回 ザクロ(タップティム)
ザクロ( 柘榴 / 石榴 )
Pomegranate
ทับทิม(タプティム)
今年も残すところわずかとなりました。タイは、西暦のお正月を祝う風習はあまりなかったのですが、外国人が増えるにつれ、カウントダウンなど年々派手になってきています。正月休みが少ないのもさみしいですが、今年は、10月の閣議で30日も祝日にすることにしたそうで、公務員は28日から5連休となりました。年の途中で思いつきで休日を増やしてしまうタイって… 。慌てて旅行を申し込んだ方もいるのではないでしょうか。
旅行好きの私にとって、年末年始は海外に出かけるチャンスで、これまでもいろんなところに行きました。旅先で出会う文化や自然は感動いっぱい、どこがよかったかと問われると迷って答えられませんが、どこがおいしかったかと問われたら、一番はトルコと答えます。トルコ料理は、地中海料理の要素がたっぷりですが、アジアのテイストも加わり、まさに東西の食文化が融合していて、世界三大料理と呼ばれるのも納得です。イスラム教国なのにお酒が飲めるというのもポイント、ただ、スイーツだけは、砂糖より甘いんじゃないかというほど激甘でパスでした。
特に印象に残った食材がヨーグルトとイチジク、そしてザクロです。今でこそタイでも絞りたてのザクロジュースをよく見かけますが、当時はなかったので、真っ赤なザクロジュースに感激しました。トルコはイランに次いでザクロの生産量世界2位なのだそうです。ザクロは縁起ものでもありますし、タイでもジュースをよく見かけるようになりましたので紹介してみたいと思います。
イランからヒマラヤの辺りが原産と言われ、5000年以上前から栽培されてきました。タイ産は主に薄いピンクの品種で、ジュースにされている真っ赤なのは輸入品です。タイ語のタプティムは、宝石のルビーからとっています。旧約聖書やコーラン、古代ギリシャやローマの医学書、アーユルヴェーダや漢方書など、古くから記載が残っています。また、様々な伝説が各地に残っていて、「果実の王様」「極上の果実」「天国の楽園の樹」「悟りのシンボル」「血液浄化の果実」「豊穣、多産の象徴」などと言い伝えられてきました。日本でも人の子を食べる鬼子母神に釈迦がザクロを与えたと言われ、吉祥果とされています。
持って重量感のあるものを選びましょう。皮を剥かなければ室温でも日持ちし、密閉して冷蔵すれば2~3ヶ月持ちます。粒だけ冷凍することもできます。食べる時は、皮にいくつか切れ目を入れて、手で割って薄皮をはずし、トウモロコシのように粒をとって種ごと食べます。水を入れたボウルの中で割ると、飛び散ることもなく皮や薄皮が浮いてくるので楽に選別できます。トッピングに使われることが多いですが、ジュースやソースにしたり、ケーキなどに使うと甘味と酸味がよく活きます。イランでは、スープにもされています。
非常に栄養価が高く、多くの抗酸化成分を含有し、ビタミンやミネラルが豊富です。女性ホルモン様成分が含まれているということで、更年期障害や不妊の改善、豊胸作用があるなどと騒がれたことがありますが、科学的には証明できていないようです。ただ、実際に身近な人が生理が安定したとか、更年期症状が改善したとか、何人もの男性が1週間飲み続けたら尿のキレがよくなったと語っています。最近の研究では、長寿遺伝子を活性化させる成分がみつかったとか、前立腺ガン細胞を死滅させる成分があったなどの発表もあります。まだまだこれから驚くような効能がみつかりそうな気がします。
青澤直子
健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road