コラム タイ野菜でべジフルライフ 第30回 ハヤトウリの蔓(ヨート・マラ・ワーン)
第30回 ハヤトウリの蔓(ヨート・マラ・ワーン)
ハヤトウリの蔓
Chayote Sprout
ยอดมะระหวาน(ヨート・マラ・ワーン)
弊著「南国(タイ)の野菜たち」の発売から1年が過ぎました。原稿書きに追われて寝食忘れてフラフラになっていたのが今ではなつかしいほどです。執筆後にも新たな食材との出会いがあったり、既知のつもりの野菜たちにもさらなる発見があったりと、野菜や果物たちには、常に驚きや感動を与えてもらっています。みなさまにも野菜や果物を単に栄養や味だけでみるのではなく、それぞれの物語を感じて、タイでのベジフルライフをお楽しみいただければと思います。
さて、この連載も今回で30回目となりました。第8回 で「ハヤトウリ」についてお届けし、簡単に蔓(若芽)についても触れましたが、あらためて青菜として親しまれている蔓についてお送りします。実は、あの時より蔓の人気があがっているのです。以前は、市場でもあまり見かけなかったのに、最近は、スーパーに普通に並んでいて、瓜よりよく出回っています。ハヤトウリの蔓は「ヨート・マラ・ワーン」と呼ばれていますが、時々「ワーン」が省略されて「ヨート・マラ」とも呼ばれます。「マラ・ワーン」は「甘いニガウリ」という意味でハヤトウリの別称です。苦みはありませんが、見た目の緑色やボコボコ具合がニガウリに似ているからでしょう。ご存じない 方のためにハヤトウリの写真も掲載しておきます。
ハヤトウリは中南米原産で、世界中でよく食べられていますが、蔓を食用とするのはアジアの限られた地域のようです。台湾では龍鬚菜(ロンシュツァィ)と呼ばれ古くから親しまれてきました。食物繊維が豊富で、「緑の血液」ともよばれるクロロフィル(葉緑素)が豊富に含まれています。解毒作用が高く、貧血の予防・改善の効果が期待されます。
茎の下の方がかたいので、手で折れるところから利用します。見た目に筋っぽく、手にとってもゴツイ気がしてちょっとひるんでしまいますが、加熱するとやわらかく適度な歯ごたえを楽しめます。そしてじんわりと甘味を感じ、とても美味しい野菜だということがわかります。蔓の先端のクルクルしている部分は、食感がよくないですし、喉に詰まると大変なので細かく切るか取り除いてください。
炒めものにピッタリの野菜ですので、ニンニクでシンプルに炒めたり、卵やキノコ、肉類などいろいろな具と合わせてみてください。味つけもオイスターソース、しょう油、ナンプラー、スープの素など工夫のし甲斐がある野菜です。私のお気に入りは、和風パスタです。お浸しや蒸し煮、あんかけにしてもおいしいです。外では食べたことがあっても、自分で買って料理したという人はまだ少ないようです。自分だけのオリジナルレシピを楽しんでください。
青澤直子
健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road