コラム タイ野菜でべジフルライフ 第25回 パームハート

タイ野菜でべジフルライフ

第25回 パームハート

ヤシの新芽
Palm heart/Palmito
ยอดมะพร้าว(ヨートマプラオ)

♪青い青い空だよ 雲のない空だよ サモアの島常夏だよ 高い高いやしの木 大きな大きなやしの実 サモアの島 楽しい島よ♪(「サモア島の歌」小林幹治作詞・ポリネシア民謡) 今でも小学校で歌われているのでしょうか?子供の頃、サモアがどこにあるかもわからず、南の国に憧れながらよく歌っておりました。まさか雪国育ちの自分が、ヤシの生い茂る暑い国に住むことになるとは、 人生ってホントにオモシロイですねぇ。

 

南国の風景に欠かせないヤシには、世界で3,500種もあると言われていますが、その利用法もさまざまです。安全な飲料水であり、嗜好品であり、砂糖も酒も酢もできます。サラカという果物や甘味にも利用されるデーツ、健康食品として注目のアサイーもヤシの仲間です。食用だけではなく、エマニエル夫人(古い?)が座っていた椅子の籐(ラタン)もヤシです。他にも建材、工芸材料、園芸資材になったりと知らずにお世話になっていることがあります。また、オイルもとれますので、燃料になったり、洗剤に使われたり、スナック菓子やインスタント食品にも使われています。パームオイルは、世界で最も消費されている植物油なのです。ここ最近、タイは、パームオイル不足でちょっとしたパニックになりました。パームオイルが買えないため、大豆油など他の安い油も品不足になり、スーパーの棚がガランとしていて驚きました。ちなみにパームオイルは、アブラヤシから作られ、ココヤシからとれるココナッツオイルとはまた別物です。ヤシ、なんだかフクザツですね…。「ヤシは、野菜じゃないから野菜ソムリエに聞かないで~!」と逃げたくなるのですが、野菜として利用されているものもあります。ヤシの木の新芽の部分ですが、パームハートとも呼ばれています。新芽を食べるヤシにもいろいろありますが、タイでは、ココヤシが主に利用されています。

 

原産地は、マレーからポリネシアと言われていますので、サモア島の歌が生まれたのもナットクですね。写真とは別に、もっとゴツイかたまりで売っていることもあります。タケノコのようにも見えます。以前は、瓶詰めの製品も見かけたのですが、最近は、目にしていません。海外向けに輸出しているところはあるようです。ヨーロッパに行くとスーパーの缶詰コーナーに中南米産の製品がふつうに並んでいます。きれいに加工していますので、見た目がホワイトアスパラガスのようでもあります。ヤシは、脇芽を出さないモノが多いので、芽をとってしまうと木は枯れてしまいます。ですから、非常に贅沢な食べ物ともいえます。もっともその後の木の利用法はいくらでもありそうですが、南米では乱獲が問題になったこともあります。

 

ココナツというと高脂肪、高カロリーのように思うでしょうが、芽の部分はカロリーは低く、ビタミンCや鉄を多く含み、食物繊維も豊富です。ココナツの実のように柔らかい部分と、タケノコのように歯ごたえがある部分がありますので、それにあわせた料理をするといいでしょう。使い方がわからない食材は、まず似た食材のレシピを応用するのがいいですから、アスパラガスやタケノコのレシピを応用してみてください。タケノコは、アク抜きなど下処理が大変ですが、ヤシの新芽はそのまま使えるのでとっても便利です。

 

タイ料理では、炒め物やスープで出てくることが多いですね。クセがないので、何にでも利用できそうです。レストランのメニューでたまにみかけますので、みつけたらぜひ食べてみてください。ナミナミのポテトのようにカットされていることもありますので、気がつかずに食べているかもしれません。ヤシの新芽を使ったサラダは、貴重なためか「millionaire’ssalad」と呼ばれています。サラダを作って百万長者の気分で食べてみるのはいかがでしょう?

青澤直子

健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road

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