コラム タイ野菜でべジフルライフ 第22回 マンムースア
第22回 マンムースア
マンムースア
Spiny Yam
มันมือเสือ (マンムースア)
先日、台湾に行って来ました。台北市内にはたくさんの市場があり、ワクワクしながら見学してきました。全体にタイの野菜や果物と共通しているものが多いのですが、サイズがみな大きいのに驚きました。中 でも目をひいたのがヤムイモ(長芋や自然薯、大薯など山芋類の総称)です。台湾産と並んで日本産の輸入品もありましたが、とにかくどちらも安いのです。タイでは、片手に乗るくらいの大きさで卒倒しそうな値札がついていることがありませんか? たまにヤワラートやルンピニ公園で中国産が安く買えることがあり、みつけるととびついて買ってしまいます。
ネパールでは、立派なヤムイモが二束三文で山積みになって売られていて、飛行機代を払ってでも買いに通おうかと思ったほどでした。その時に持てるだけ持ち帰って宴会で出したのですが、後になって若い男性から、その夜眠れずに大変だったと聞かされました。ヤムイモは滋養強壮作用が高いと言われていますが、それほどまでとは…。また、ヤムイモには、消化吸収を助ける酵素がダイコンの3倍あると言われます。オクラでもとろろご飯モドキはできますが、ヤムイモと違ってすぐに消化されないので、つい食べ過ぎて苦しむことがあります。ヤムイモのパワーってなんだかすごそうですね。
ヤムイモは世界に600種以上あり、アフリカでは主食にしているところもあります。実は、タイ周辺が原産と思われるヤムイモもあります。その名を「マンムースア」といいます。マンはイモ類のことで、ジャガイモをマンファラン、サツマイモをマンテートと呼んだりします。ムーは手、スアは虎という意味で「虎の手芋」という感じでしょうか。コロンとしてゴツゴツしたかわった形のイモです。日本の冬にあたる季節によく出回っていますので探してみてください。ただし、ヤムイモアレルギーの方は、やはり避けた方がいいようです。
熱帯アジア原産と言われますが、タイで学術名の表記がバラバラで、私の著書では「トゲイモ」と和名を紹介しましたが、「ダイジョ(大薯)」の方が近いような気がしてきております。粘りが強くちょっと粉っぽいですが、甘味とコクがあります。ヤムイモ類は、触ると痒くなることがあります。これは、アクである「シュウ酸カルシウム」の働きによるもので、酢水につけたり、加熱してから皮を剥くとかゆみを抑えられます。マンムースアは、ボコボコしていて剥くのが大変なので、皮膚が弱い方は手袋をした方がいいでしょう。新聞紙に包んで冷蔵庫や冷暗所に置けば数ケ月程度の保存が可能です。切った場合は、ラップに包んで冷蔵庫で、またすったりカットしたものを冷凍保存することもできます。
ヤムイモというとすりおろしたり短冊切りにして生で食べるイメージが強いですが、他のイモ同様、加熱してもおいしいものです。お好きな味で煮る、蒸す、炒める、揚げるなどいろいろ試してみてください。ちょっと違った食感になります。特にマンムースアは生だと変色しやすいので加熱向きで、さらに粘りが強いのですりおろして使うのがおすすめです。お好み焼きやグラタン、オムレツに混ぜるとふわっと感が出ます。また、すったものを加熱するとかたまる性質がありますので、コネコネしてもんじゃっぽく具を入れて味をつけて食べたり、タッパーなどで成型してから切って出してもおしゃれです。タイ人は、マンムースアを砂糖で煮込んでデザートのようにして食べるそうです。ただし、加熱した場合は、消化酵素の力は減ってしまうので食べ過ぎにはご注意を!
青澤直子
健幸料理研究家(野菜ソムリエ&雑穀エキスパート)
健幸料理の店 SALADee
491/14-15 Silom PlazaGF, Silom Road