コラム お金の知識を高めるコラム Vol.98 FOMCは、利下げ再開も、慎重なスタンスを維持

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Vol.98 FOMCは、利下げ再開も、慎重なスタンスを維持

9月16、17両日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利を0.25%引き下げることを決定しました。利下げは昨年12月以来です。

今回の判断は、雇用市場が軟化する傾向が見られ、執拗に低下の兆しを見せなかったインフレにも緩和の兆候が得られた事から、景気のダウンサイドリスクに備えた対応を優先したと考えられます。

パウエル議長は先月のジャクソンホール会議で、政策金利引き下げを再開する用意があると示唆していました。市場ではこれを、今後断続的に利下げしていくシナリオへの転換と読み込みました。そのため、年末までに0.5%幅の利下げが実施されるとの予想が広がっていました。

しかしパウエル議長は、記者会見で、雇用市場が以前ほど盤石ではないと認めながらも、依然としてインフレリスクを注視し、慎重姿勢を崩さない意向を表明しました。

トランプ政権は、より大幅な利下げを求める圧力を強めています。しかし、今回の判断に反対したのはトランプ氏が新たに指名したマイラン理事1人にとどまり、FOMCメンバーには、圧力に屈する兆しは見られませんでした。今後も、インフレ圧力にはしっかりと注意を払う決意の表れと言えるでしょう。

金融市場では、雇用市場が失速の兆候を示しているにもかかわらず、金融政策の方向性が明確でないと受け止めました。その結果、会見後に米国債利回りは上昇しました。金融市場が織り込むような大幅利下げが実現するには、より長い時間が掛かると見られます。

米FRBは引き続き、トランプ政権からの圧力をいなし、インフレ圧力に注意を払いながら、雇用市場の悪化を防ぐという難題に取り組むことになります。また、パウエル議長は、来年五月の任期満了まで、金融政策を巡って、トランプ政権との厳しいせめぎ合いを続けることになるでしょう。

長谷川 建一

国際投資ストラテジスト

シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

著書
ブログ: HASEKEN
寄稿中

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