2024年は、当初想定していたよりもグローバルに国政選挙の結果が金融市場に影響する年だったと評価される1年になりそうです。
7月4日に英国で投票が行われた下院選挙(下院選・定数650)では、保守党の「14年間にわたる経済的な失政」を批判したスターマー党首率いる労働党が412議席を獲得し圧勝し、14年ぶりの政権奪還に成功。しかしスターマー新首相も、低迷する英国経済を立て直す具体的な手段を示せているわけではありません。「魔法の杖はない」と有権者や周囲には語っているとおり、事態を好転させるにはかなり時間がかかりそうです。国内総生産(GDP)の100%に達する政府債務の拡大を抑制するため公共サービスは切り詰められ、インフレの影響と国民の税負担率の高さは家計消費を鈍らせています。住宅も高騰し不足していて、企業マインドも冷え込んでいます。今年の英国経済の成長予測は1%未満に過ぎません。ブレグジットに一時熱狂した英国ですが、パンデミックやエネルギー高騰といったショック要因も重なって、成長戦略は見えてきません。
7月7日に投開票されたフランス国民議会(下院・定数577)決選投票では、第1回投票の結果を覆し、第2勢力と予想されていた左派連合が最大勢力となりました。第1回投票の時点では、最多議席を獲得すると予想された極右政党・国民連合(RN)は「極右外し」に屈しました。蓋を開けてみれば、左派連合が予想外の勝利を収めるという番狂わせに、フランス政治の不確実性についての不安が広がる可能性には留意しておくべきでしょう。
なにより、フランスは政治的にはEUの主軸となる国である上、ユーロ圏では経済規模も2番目に大きいのです。そのフランスで、政治・経済ともに不確実性が増大することは、EUのみならず金融市場にとってもプラスにはなりません。
そして、米国では大統領選挙を11月7日に控えています。第1回の討論会では、バイデン大統領とトランプ前大統領が対峙しましたが、政策論争よりもバイデン大統領のパフォーマンスに注目が集まる結果となりました。席上、バイデン氏の受け答えは鈍く、言い間違いも散見され、高齢に対する懸念が強まってしまいました。世論調査でリードを伝えられるトランプ氏ですが、大統領に返り咲く「もしトラ」に備える動きは強まっています。「もしトラ」を想定した動きとは、「不確実性」に備えるという動きにほかなりません。今回の討論会を受けて、翌日の米国株式相場が反落したことに現れているように、金融市場にとっては不確実性は受け入れがたいものです。候補者差し替えの声も出るなど、米国大統領選挙は最後まで混沌とした争いが続きそうです。