コラム お金の知識を高めるコラム Vol.46 ハイリスク・ハイリターンの犠牲再び

お金の知識を高めるコラム

Vol.46 ハイリスク・ハイリターンの犠牲再び

米投資会社アルケゴス社が3月末に破綻しました。本来なら、富裕層一族の資産を堅実に投資するファミリーオフィスと呼ばれる形態の運用会社です。しかし、その運用の中身を見ると、実際の資産規模よりも、驚くほど大きな量のリスクを取っていたようです。

彼らのポジション(取引の内容)は、「トータル・リターン・スワップ」というデリバティブ取引でした。株に投資するなら、本来は株そのものを買ってそのリスクを取るのですが、今回は、特定の株の値動きが予想の通りに動いた場合に、得られるであろう収益を受け取れる仕組みを組み込んだデリバティブズ契約だったようです。

アルケゴス社の資産は約100億ドルあったと言われていますが、リスク量はその5倍の500億ドルに相当したといわれます。まさにハイリスク・ハイリターンの取引です。

運用会社は、そうした運用をするために、取引の相手方となるプライムブローカー(投資銀行)と対になっています。上述のデリバティブ取引もいくつかの投資銀行が商品を提供していました。値動きが、ある期間内で一定範囲に収まっていれば、価格変動による差損益のみを清算して取引を終えます。しかし、一定以上に変動が大きくなり、差損が大きくなると、投資銀行は運用会社に追加証拠金の提供を求めます。しかし、資産規模の5倍のリスクを取って、大きく方向感を外したアルケゴス社は、3月22日週に急激な評価損失の増加に見舞われ、巨額の追加証拠金要求が発生、数日で200億ドルを失ったといわれています。資産は100億ドルですから、残念ながら十分な現金はなく、破綻しました。

追加証拠金を用意できないと、そのポジションは解消され、残った資産で損を穴埋めさせられます。そのため、いくつかの投資銀行が一斉にポジションの解消に動き、相場の変動はますます大きくなりました。逃げ遅れた投資銀行はポジションを解消しても損が残る状態となり、アルケゴス社の損を被ることになったところもあります。報道では、スイスの投資銀行クレディ・スイスが47億ドル(約5100億円)の減損を計上しました。

高いレバレッジの取引は、良い時は、持っている資産規模の何倍もの収益が得られるので高い利回りとなりますが、ひとたび逆に動いてしまうと短期間で収益が悪化、アルケゴス社のような厳しい状況に追い込まれることがあります。1997年に大規模な市場の混乱を引き起こしたロングタームキャピタル社(LTCM)もそうでした。ハイリスク・ハイリターンな投資には十分に気を付けましょう。

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    長谷川 建一

    国際投資ストラテジスト

    シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004 年末に、東京三菱銀行(現三菱UFJ 銀行)に移籍し、リテール部門でマーケティング責任者、2009 年からは国際部門に移りアジアでのウエルスマネージメント事業戦略を率い2010 年には香港で同事業を立ち上げた。その後、2015 年香港でNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank を創業。2020 年には、Wells Japan Holdingsに参画し、新たな金融サービスの開発に取り組んでいる。世界の投資商品や投資戦略、アジア事情に精通。わかりやすい解説には定評がある。香港をはじめ、日本やアジア各地での講演も多数。京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    著書
    ブログ: HASEKEN
    寄稿中

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